2013 Fiscal Year Research-status Report
企業固有ボラティリティとクラッシュ・リスクに基づく財務会計の機能の検証
Project/Area Number |
25780283
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村宮 克彦 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (50452488)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 財務報告 / クラッシュ・リスク / 東日本大震災 / 業績予想 |
Research Abstract |
本研究課題は,企業が行う財務報告の質と(1)株式リターンの分散,及び(2)より高次モーメントである歪度や尖度と密接な関連がある株式リターンの分布の裾との関連性を分析することにより,財務会計の機能に関する新たな知見を得ることをも目的としている.前者の分析では,株式リターンの分散の中でも,とりわけ,市場全体のリターン変動では説明できない企業固有のリターン・ボラティリティ(以降,IV)と財務報告の質との関連を分析する.一方,後者の分析では,株式リターンの分布の裾の中でも,とりわけ,左裾にあたる株価の大暴落(以降,クラッシュ)と財務報告の質との関係を分析する. 初年度にあたる今年度は,さまざまな財務報告の質を用いて,上記(1)と(2)の分析を行った.その質とは,たとえば,会計利益のうち,キャッシュ・フロー以外の構成要素,すなわち,会計発生高を用いたものや,経営者が決算発表の際に公表する次期業績予想利益の精度を用いたものなどである. 一連の分析により,業績予想利益の精度を財務報告の質と捉えた場合,財務報告の質が高い企業ほど,IVが高い傾向にあること,及びクラッシュするリスクが低くなる傾向があることが明らかとなった.既存研究では,IVが高い企業ほど,企業固有の情報が株価により反映されており,将来キャッシュ・フローが現在株価に多く反映されていることが明らかにされている.したがって,IVは,効率的な価格形成,ひいては,効率的な資源配分と密接に関連しているといえる.この事実を与件とすると,前者の発見事項は,質の高い財務報告を行うことが,効率的な価格形成や資源配分を促進することを示唆する.一方,後者の発見事項は,質の高い財務報告を行うことにより,投資家の資産価値をわずかな期間によって多く毀損させるリスクが低くなることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存研究の渉猟から分析,そして結果の解釈に至るまで計画通りに進んでおり,初年度の段階で,既に結果をまとめ,名古屋大学,東京経済大学,東北大学の3校で研究報告を行うことができていることから,おおむね順調に進展しているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に研究報告を行い,様々な研究者と意見交換ができたおかげで,2年目以降の取り組むべき課題や発展可能性などが明確となった.今後は,意見交換を通じて得られた知見をもとに,追加分析を行い,またそれと同時に,理論モデルの精緻化を図り,研究の発展に努めていきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入しようと思っていた物品が購入できなかったため. 早々に物品購入に充てる予定である.
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