2014 Fiscal Year Research-status Report
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25780287
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
山西 佑季 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (00589921)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 包括利益 / 株価関連性 / 利益の質 / IFRS / 会計基準の変更 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2011年3月末決算期以降に財務諸表上に開示されている『包括利益』情報の株価関連性について実証的な観点からの検討を行うことを目的としている。 昨年度における本研究の実施内容としては、包括利益情報の株価関連性おいて必要なデータの収集及び同データを用いた予備的分析の実施、本研究における利益及びその性質に関する理解を深めることである。 上記内容のうち、特に利益及びその性質については、本研究において着目する『一時的利益』項目に分類されると考えられるその他包括利益項目(OCI)と特別損益項目(SI)の価値関連性・持続性・予測価値についての検証を行っている先行研究を概説することにより、両項目の比較に基づく利益項目の分類表示の有用性について考察している。 近年の米国企業を対象とした先行研究によると、OCIはSIと比較して重要性は低いが、ある程度の価値関連性を有すること、一般的に一時的利益項目として同様に捉えられるSIとOCIの持続性と予測価値が実際には異なるものであることを提示している。また、実証分析を基にした損益項目の表示方法については、実証的アプローチに基づく会計基準の設定を促すものであり、近年会計基準設定において意思決定有用性が重視されていることから、このような実証分析に基づく研究結果は、会計基準の在り方を左右する大きな要因であることが考えられる。しかし、会計上の報告利益は、理想とされる経済的利益とは異なる様々な制約や恣意性が介在する指標であり、報告利益の意思決定有用性に関する実証研究についても、利益指標の利用者とその利用目的に影響を受けた仮説に基づくため、その結論は仮説の捉え方によって大きく異なる可能性があることに留意する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度中に『日経NEEDS FinancialQuest』から分析に必要な財務・株価データを取得しており、データの整理及び必要な英文文献の翻訳を既に終えている。現在、学会報告及び投稿に向けて論文を作成中である。 また、本研究に関わる利益の質についての考察として、熊本県立大学総合管理学部創立20周年記念論文集に『利益の質の測定方法に関する予備的考察―一時的利益の意思決定有用性分析についての課題―』を投稿しており、既に出版されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本科研費事業の最終年度であるため、これまでの研究内容をまとめるとともに、研究の達成度に記述したとおり、学会報告及び投稿に向けて論文を作成する。 現在のところ、11月頃に開催される予定である第31回日本経営分析学会秋季大会において、上記分析結果に基づいた発表を行い、その後同学会の発行する『経営分析研究』に報告論文(査読付き)に論文を投稿することを計画している。
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Causes of Carryover |
平成27年度において、研究会報告と学会報告のために2回出張する予定であり、今年度直接経費交付額の10万円では不足する可能性があるため、予備費として約3万円を繰り延べた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり、研究会報告と学会報告のために2回出張するための予備費として用いる予定である。
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