2015 Fiscal Year Annual Research Report
会計的裁量行動と実体的裁量行動に対する株式市場の反応に関する実証分析
Project/Area Number |
25780288
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
山口 朋泰 東北学院大学, 経営学部, 准教授 (50613626)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 利益マネジメント / 会計的裁量行動 / 実体的裁量行動 / 利益ベンチマーク / 経営者予想利益 / 産業平均利益率 / 株式市場 / 株式リターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,利益マネジメントを実施した企業に対して株式市場がどのように反応するかを実証的に解明することである。研究実施計画において,本年度は利益マネジメントに情報の非対称性があるか否かを検証する計画を立てていた。 一方で,近年,米国や英国の先行研究では,株式市場がアナリスト予想利益の達成に対してリウォードを付与するが,利益マネジメントを通じたアナリスト予想利益の達成に対しては当該リウォードを割り引くことが示唆されている。そこで,日本の上場企業を対象に,利益マネジメントを通じた経営者予想利益の達成に対する株式市場の反応を昨年度から調査していた。利益マネジメントの手法としては,会計方法の変更による会計的裁量行動と事業活動の変更による実体的裁量行動に着目した。実体的裁量行動に対する株式市場の反応については未解明の部分が多く,研究の必要性が高い。 分析の結果,会計的裁量行動を通じた経営者予想利益の達成に対して,当該リウォードは割り引かれないことが示唆された。一方で,実体的裁量行動を通じた経営者予想利益の達成に対して,当該リウォードは割り引かれるが依然として残ることも示唆された。このことは,株式市場が利益マネジメント,特に会計的裁量行動に誤導された可能性を暗示する。本分析の証拠は,投資家に有益な情報を提供できる点で重要である。 また,株式市場がどのような利益ベンチマークに着目するかを先行研究で検討していくうちに,産業平均利益率との比較を通じて企業を評価しているのではないかと考えた。そうした状況において,経営者には産業平均利益率を達成するインセンティブがある。そこで,経営者が産業平均利益率を達成するために利益マネジメントを実施しているとの仮説を設定し,当該仮説を支持する結果を得た。競争が激しい産業に属する企業ほど産業平均利益率達成のための利益マネジメントを実施することも示唆した。
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Research Products
(2 results)