2014 Fiscal Year Research-status Report
企業価値評価における経営者予想の有用性とR&D集約企業
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25780296
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
石光 裕 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (90449504)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 研究開発 / 将来業績 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は実証分析の初年度にあたり、研究開発投資と将来業績の関係について証券・財務データを用いて分析を行った。研究実績とその概要は以下の通りである。 1「機会主義的な研究開発費の削減と将来業績」(単著) 研究開発投資の額は相対的に大きく、また発生した期の費用処理とすることが義務付けられているため、経営者の裁量行動の対象とされることが多い。具体的には損失回避目的で研究開発費の削減を行う経営者行動が想定され、その場合将来パフォーマンスは低下するものと考えられる。本研究ではわずかにプラスの利益を計上し、かつ実質的に研究開発支出を削減した企業を機会主義的に研究開発費を削減した企業とし、その後の企業業績(ROA、資本的支出+研究開発支出、株価純資産倍率)の推移を観察した。そこから機会主義的でないサンプルと比べ、事後のパフォーマンスが低下していることが示された。これは機会主義的な研究開発費の削減は企業の将来価値を棄損していることを示唆している。 2「ダウンスコーピング戦略と企業業績」(共著) 日本企業の多角化の程度が時系列でどのように変化しているのかを検討し、33業種のうち22業種がダウンスコーピングの傾向、11業種が多角化の傾向があることが示された。さらに企業がダウンスコーピングを行った場合、その後の研究開発投資を削減しなければ、当該投資は効率的に企業の将来業績に結びつくと考え検証を行ったが、結果はこれを支持するものではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的を達成するため、昨年度は先行研究のレビューと検証仮説の構築を行い、本年度は証券、財務データを用いた仮説の検証を計画していた。本年度は前述のように「機会主義的な研究開発費の削減と将来業績」「ダウンスコーピング戦略と企業業績」という研究目的に合致した2件の検証を行っており、おおよそ当初の計画どおりに進展している。よって昨年度からの蓄積と併せると本研究課題は現在までおおよそ順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は研究課題の最終年度にあたり、現在進めている実証分析をさらに進めるだけではなく、これまでの研究成果の外部への公表を計画している。これら計画を推進していくため、以下のような方策を考えている。 まず実証分析に関しては、仮説の構築にとって重要となる文献の収集・整理を引続き行っていき、可能であれば研究開発活動に携わる方へのインタビューを行いたい。学会や研究会への参加は研究成果を外部に公表する機会を得るだけでなく、研究をブラッシュアップしまた新しいアイディアを得るために有用であると考えられるため、積極的に行いたい。
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