2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780297
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
東 健太郎 立命館大学, 経営学部, 准教授 (20535843)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会・環境情報開示 / 環境会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、環境情報開示に関する動機の研究に関して、福島原子力発電所事故後の我が国の電力業界における情報開示を素材として研究を主として実施した。 英文ジャーナルにおける先行研究においては、壊滅的な環境事故を起こした直後、企業は、自社ならびに産業にとってポジティブな情報開示を増加させることが知られている。例えば、エクソン・バルディーズ号による事故(1989年)の直後、アメリカの石油業界はアニュアルレポートにおける環境情報開示を増加させた。また、同事故を含む5つの環境事故の直後、オーストラリア企業が開示する環境情報も増加した、などである。先行研究においては、これらのディスクロージャー行動は、企業の情報開示が正統性の確保のために使用されているという見地から、説明される。 一方、理論的な見地からは、正統性の低い企業の正統化行動は、企業の正統性を(企業の意図に反して)逆に損なうことが指摘されている。この指摘に従えば、大規模な環境事故を起こし、正統性を著しく損傷した企業は、正統化行動を減少するはずである。事実、福島原子力発電所事故の直後、東京電力はサステナビリティ報告書の発行を停止している。 先行研究において分析対象となってきたのは、石油流出事故や爆発事故などであるが、原子力事故を対象とし、情報開示への影響を定量的に分析した研究はこれまでのところ存在しない。原子力発電所の事故による被害は、先行研究において分析対象となってきた事例よりも広範にわたり、より甚大な正統性の損傷を招いたと推測される。その結果、先行研究とは異なった実証的結果を得られる可能性がある。このような見地から、福島原子力発電所事故の直前と直後における我が国の電力会社の社会・環境情報開示に関して、実証的なデータを収集し、福島原子力発電所事故が、情報開示に対して与えた影響を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境情報開示の動機に関連して、先行研究とは異なった実証的結果を収集することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
・環境パフォーマンスデータの利用可能性の拡大 ・GRIインデックスを用いた環境情報開示の定量的データ収集
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Causes of Carryover |
今年度はオーストラリアのクイーンズランド工科大学に滞在しながら、研究を実施した。研究環境(資料やパソコンの利用可能性、データ収集のための大学院生の有無など)が、当初の想定と異なっていたことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データの収集に必要な謝金を中心に使用する予定である。
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