2015 Fiscal Year Annual Research Report
社会的地位階層制のメカニズムに関する数理社会学的分析
Project/Area Number |
25780304
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀧川 裕貴 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60456340)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 数理社会学 / 地位階層制 / 社会ネットワーク / ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度および研究期間全体を通じた具体的な成果は次の通りである.第一に、地位階層制の成立過程を数理モデルによって定式化した.地位階層制とは、社会内の人々が物的ないし象徴的資源において不均等な社会的地位に分化して位置づけられる社会構造のことである.そのメカニズムの解明は社会学の中心的なテーマであるが、いまだ説得力ある理論は確立されていない.本研究では、R.グールドの先駆的業績を拡張し、ゲーム理論とネットワーク理論に基づいて社会的地位階層制の成立メカニズムを数理的に定式化した.特に、ダイアドモデルを脱して、システム全体の行為者の挙動から階層制が成立するメカニズムを提案したところに独創性がある.これに加えて、合理性に対する仮定を緩めたより現実的なモデルをエイジェントベースドシミュレーションによって定式化し、現実の社会過程としてもモデルで定式化したプロセスが生じうることを示した点も重要である.最終年度は以上の知見を論文の形でまとめ国際誌に投稿するための準備を行った. 第二に、関連して地位階層制を中心とした社会構造の成り立ちを実証的に解明するための方法論を開発した.具体的には、調査データから社会的位置の間の関係性、ネットワークを解明する統計的手法を開発し、これを経験的研究に適用した.最終年度は、国際会議等で開発した方法論にかかわる研究を発表し、数理モデルへの接続に向けての示唆を得た.地位階層制の数理モデルとの直接的な接続については今後の課題として残された.
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