2015 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災支援における市民セクターの布置と機能についての社会学的研究
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25780316
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仁平 典宏 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40422357)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 活動支援金 / 陸前高田市仮設住宅 / ボランティア / NPO / NGO / 復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、東日本大震災における市民活動の全体像を捉えることである。2015年度は主に、(1)中央共同募金会「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」の助成団体(中長期)への質問紙調査と、(2)受け手側の調査として岩手県陸前高田市における被災者のニーズの変化及び支援団体との関係に関する調査を行った。 (1)については、2013年度に同募金の申請書の分析を行ったが、全体の大まなか傾向をつかむにとどまっていた。今回行ったのは明確な仮説にもとづいて設計された質問紙調査であり、過去5年間の活動の動向とそれを可能にする要因を詳細に捉えるものである。対象は、助成先団体として公開されている名前に基いて住所をインターネットなどで調べ、郵送先を特定することができた約700団体である。調査日は3月11日が近い3月上旬に行い、現在回収中である。 (2)については、多くの支援団体調査が活動の担い手に焦点を当てており、その機能について受け手側から捉える調査がほとんど行われていないことを踏まえて、岩手県陸前高田市における仮設住宅の自治会長を対象とする聞き取り調査を行った。具体的には過去にどのような支援団体が訪れたのか、その有効性と問題点は何かといったことについてデータを収集した。これは2011年からの継続調査でもあり、ニーズの変化の中で、支援活動の変化を捉えることができる。2015年度の変化として、災害公営住宅建設、高台集団移転、自力再建が進む中で、仮設住宅に取り残されている人の脆弱性とリスクは急速に高まっていた。一方で支援活動は減少しており、状況の深刻化が予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・岩手県陸前高田市における事例分析については予定通り行い、共著論文を執筆することができた。 ・本研究課題の大きな目的の一つだった支援団体への質問紙調査を、中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」の助成団体(中長期)を対象として実施することができた。 ・質問紙調査を、東日本大震災の5年後の時期に合わせて3月に行ったため、関連する業績はこれからである。2016年度には、本調査を元にした学会報告と論文執筆を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
・基本的な調査方針はこれまでの通りである。 ・最終年度は、調査の継続に加え、これまでの調査の成果を学会発表や論文の形で発信していくことも重視する。 ・特に質問紙調査については、中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」の中長期助成団体のみならず、短期に対しても行うことで、活動の質と量、及び、それを支えてきた資金構造、政治との関係など、これまで明らかにされてこなかった側面について解明してく。 ・それを通して、準市場化が進む公的領域において発展してきた助成スキームが、日本の「市民社会」のアクターをいかに規定しているのか、また災害復興という文脈でどのような影響を与えきたのかについて、海外の研究成果とも突き合わせながら、理論的・経験的に明らかにしていく。
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