2014 Fiscal Year Research-status Report
NIMBY施設の公平な負担ないし削減を実現するための合意形成に関する社会学的研究
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25780317
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
熊本 博之 明星大学, 人文学部, 准教授 (80454007)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | NIMBY / 普天間基地 / 辺野古 / 原子力発電所 / 祝島 / 国土のグランドデザイン2050 |
Outline of Annual Research Achievements |
NIMBY施設としての在日米軍基地の公平な分担と漸次的な削減を求める沖縄の民意は、2014年11月の県知事選挙で辺野古への普天間代替施設の建設阻止を公約として掲げた翁長雄志氏の当選、および12月の衆議院選挙における4小選挙区での辺野古移設反対派候補の当選によって明確に示された。しかし政府は辺野古移設を強行し、沖縄県との間に深刻な亀裂が生じている。 沖縄の民意を無化するような政府のふるまいを理解するために、2014年7月に発表された「国土のグランドデザイン2050」を分析した。「現代の防人」として沖縄を位置づけ、国防という役割を沖縄に与える政府の方針は、沖縄に「国防に貢献するか、しないか」という選択を迫った。しかも国防は国家の専管事項であるため、地方自治体に拒絶する選択肢はなく、結果として沖縄の民意は無化されるに至っている。さらには与那国島や石垣島、宮古島での自衛隊基地建設の計画も進んでおり、軍事による国家安全保障体制はますます強化されている。また前年度の意識調査を通して、米軍基地を抱えていない地域における基地への拒絶傾向の強さが示されたことからも明らかなように、負担の公平な分担を実現することも困難な状況にある。 上関原発の建設計画も、未だ白紙撤回とはなっていない。川内原子力発電所の再稼働も決定し、政府のエネルギー政策における原発の位置づけは福島原発の事故以前と変わりがないことが明らかになるなか、祝島では漁業補償金の受け入れ拒否を貫くなど、島全体での抵抗運動が続けられている。その背景には島での自立した生活が継続できていること、そして島外からの支援の継続があげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
沖縄での調査については概ね順調に進んでいる。名護市長選挙、沖縄県知事選挙という二つの大きな選挙を通して沖縄の米軍基地問題をめぐる状況は次のステップへと移行したが、その移行過程を継続的に追うことができている。 一方で祝島については、2014年度は訪問することができなかった。沖縄での大きな流れを追うことに時間が費やされてしまったことが原因である。しかし現地での協力者への定期的な連絡や、関東で開催された祝島支援イベントなどへの参加を通して、現状の把握につとめている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果のまとめを進めると同時に、研究成果の還元も進めていく。特に沖縄の在日米軍基地問題については、2015年6月に那覇市内で市民参加型のトークイベントを開催し、研究成果を還元しつつ、さらなる研究の深化を図る。また、NIMBY施設の公平な分担と漸次的な削減の可能性について論じた著書の執筆を進めることで、研究成果の発表を行う。さらに、軍事における被害と加害をテーマとした論文を『環境社会学研究』21号に掲載する予定である(依頼論文)。
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Causes of Carryover |
物品費の使用額が予想より下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入にあてる。
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Research Products
(4 results)