2015 Fiscal Year Research-status Report
NIMBY施設の公平な負担ないし削減を実現するための合意形成に関する社会学的研究
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25780317
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
熊本 博之 明星大学, 人文学部, 准教授 (80454007)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | NIMBY施設 / 負担の公正化 / 軍事施設 / 生活者 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
NIMBY施設の公平な分担と漸次的な削減を実現するための条件について、事例研究と意識調査を通して検討することを目的とする本研究では、これまで、返還が予定されている米海兵隊基地普天間飛行場の代替施設となる新たな米軍施設の建設予定地となっている沖縄県名護市辺野古地区を主な調査地とした研究を進めてきた。 本事例については、特に2014年11月に、辺野古移設反対を公約に掲げた翁長雄志が沖縄県知事に当選して以降、移設計画を進める日本政府との間の対立が激化し、それに伴って辺野古現地での反対運動も激しいものとなっている。米海兵隊基地キャンプ・シュワブとの関係上、基地への反対を主張しづらい環境にある辺野古住民は、反対運動との対立を深めることによって、より反対を主張しづらい状況へと追いやられている。 NIMBY施設の公平な分担と漸次的な削減を実現するためには、まずはNIMBY施設の受け入れを迫られている地域の住民が、反対の意思を表明できる環境をつくることが前提となる。そのためには、地域住民が置かれている状況についての理解が広まることが重要である。辺野古においても、住民による「日常の辺野古」についての情報発信が始められたり、各種メディアによる生活者としての辺野古住民に着目した報道がなされるようになるなど、状況の改善に向けた動きが見られ始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
辺野古、および祝島でのフィールドワークを通して、NIMBY施設の公平な分担と漸次的な削減を実現するための大きな条件として、施設の受け入れを迫られている地域の住民が、受け入れへの反対を主張できる環境をつくることがあるとの知見を得ることができている。 ただ辺野古においては、政府と沖縄県との関係の悪化もあり、未だに問題は継続しており、引き続き調査を続けていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
辺野古でのフィールドワークを継続すると同時に、普天間基地移設問題に対する辺野古住民の応答について、その理由を分析した上で、その成果を広く世間に伝えていく。 また、沖縄県内で辺野古移設を推進する立場で活動している人たちへの調査も進めていくことで、沖縄における基地問題を巡る言論状況の閉鎖性が、結果的に米軍基地問題を沖縄だけに押し込めることに接続していることを指摘していく。
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Causes of Carryover |
本研究の調査対象である普天間基地移設問題においては、調査地である辺野古地区での反対運動の激化により、辺野古住民と反対運動に参加する市民との関係が、平成27年度の最初の時点では想定できなかったほどに悪化している。 この状況の変化を受けて、平成28年度も辺野古区での調査を継続することで、反対運動と辺野古住民との対立の原因を見極め、和解の可能性を提示することが、NIMBY施設の公平な分担と漸次的な削減を実現するという本研究の目的を達成する上で不可欠であるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
辺野古地区でのフィールドワークを3回程度実施する。また、沖縄での成果発表の場を設ける。
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Research Products
(4 results)