2015 Fiscal Year Research-status Report
ナショナリズムと「文明的」自己像形成をめぐる現象の比較・歴史社会学的考察
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25780323
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 里欧 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40566395)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナショナリズム / 文明化 / オリエンタリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「ナショナリズムと『文明的』自己像形成をめぐる現象」というテーマについて、比較・歴史社会学的考察を行うことを目的に研究活動を行った。特に、近現代日本社会におけるナショナリズムやアイデンティティのあり方の歴史的・文化的特徴を、『文明化』を象徴する理想的な自己像形成にまつわる現象を研究することにより、比較社会学的視点を含みつつ明らかにすることを目的とした。 第2年目である本年の主な研究内容は、資料収集・精読、および、論文執筆・刊行(「オリエンタリズム」『映画は社会学する』(法律文化社)(印刷中)、「『近代主義の残像』としてのフィンランド教育ブーム」『岩波講座 現代 第8巻』(岩波書店)(刊行予定)、「塾」『日本文化事典』(丸善出版 2016年刊行)、文化社会学・家族社会学をテーマとする本におけるコラム担当)、ワークショップにおける発表(「文化社会学から読む」「メディア文化論公開ワークショップ 1 加藤秀俊『メディアの展開』と京都大学の教育文化メディア研究」(2015年11月10日 於京都大学教育学部))である。「オリエンタリズム」にかんする論文においては、特に、サイードのオリエンタリズム概念について先行研究を参照しつつ、理論的に検討し、自己像や他者象の構築の様相について分析を行った。「フィンランド教育」にかんする論文では、先進的・文明的とされるフィンランド教育モデルの日本社会における受容について、比較社会学的視点から考察した。ワークショップにおいては、近世日本の「文明化」の諸相について、文化社会学的視点からコメント・討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年目である本年度は、理論的考察を深めるとともに、資料収集を行い、独立論文(「オリエンタリズム」『映画は社会学する』(法律文化社)(印刷中)、「『近代主義の残像』としてのフィンランド教育ブーム」『岩波講座 現代 第8巻』(岩波書店)(刊行予定))を執筆した。「オリエンタリズム」にかんする論文(「オリエンタリズム」『映画は社会学する』(法律文化社)(印刷中))では、サイードの「オリエンタリズム」概念について、X. Chenによるオリエンタリズム、オクシデンタリズムにかんする議論やナショナリズムにかんする議論も補足しつつ、理論的に検討し、理解を深めた。「フィンランド教育」にかんする論文(「『近代主義の残像』としてのフィンランド教育ブーム」『岩波講座 現代 第8巻』(岩波書店)(刊行予定))では、「文明的」・先進的モデルとされるフィンランド教育像の日本社会での受容について分析を行った。論文では、比較社会学的視点から、「文明的」モデルとしての北欧像が日本社会の自己像形成に与えた影響についても考察した。その他、辞書が刊行され(「塾」『日本文化事典』(丸善出版 2016年刊行))、コラム(文化社会学・家族社会学にかんする本における)を執筆した。また、ワークショッのパネリスト(「メディア文化論公開ワークショップ 1 加藤秀俊『メディアの展開』と京都大学の教育文化メディア研究」(2015年11月10日 於京都大学))をつとめ、教育・文化・メディアの観点から議論を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、「ナショナリズムと『文明的』自己像形成をめぐる現象」というテーマについて、比較・歴史社会学的考察を行うことを目的とする。本年は、第2年目にあたるが、第2年目に不足のあった作業としては、体調不良により出張を当初の計画通り遂行することが困難であったことから、資料収集・学会発表を十分に行うことが難しかった。資料収集については、近年の図書館の資料のデータベース化や相互リンクの発達などにより、かなり問題が解決したが、学会参加・研究会参加については十分にできなかった。そのため、第3年度は、学会発表、学会・研究会参加をより積極的に行い、自身の研究について、様々なコメントや批判を得る機会を増やしたい。具体的には、関西社会学会(於日本)、日本社会学会(於日本)、日本教育社会学会(於日本)、「Nordic Association for the Study of Contemporary Japanese Society Conference」(於北欧)、人種研究会(於日本)、ジェンダー研究会(於日本)、現代社会学研究会(於日本)等への参加を考えている。研究課題については、各々のテーマについて独立論文を執筆し、論文投稿、あるいは図書の一部として出版を考えている。これらの作業ののち、成果報告書を執筆する予定である。成果報告書の草稿執筆後は、研究会発表、ユバスキュラ大学社会科学哲学研究所の研究者など、国内外の研究者との意見交換などをとおし、批判的コメントをいただき、それをもとに最終稿を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は出張を当初の計画通り遂行することが困難であったことから、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、研究再開時に使用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、本年度、十分に行えなかった作業、特に、資料収集、学会発表、学会・研究会参加に重点的に使用する予定である。 具体的には、国立国会図書館、日本近代文学館等への資料収集活動、「日本社会学会」(於日本)、「関西社会学会」(於日本)、「日本教育社会学会」(於日本)、人種研究会等への参加を考えている。
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Research Products
(5 results)