2016 Fiscal Year Research-status Report
ナショナリズムと「文明的」自己像形成をめぐる現象の比較・歴史社会学的考察
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25780323
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 里欧 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (40566395)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナショナリズム / 文明化 / 近代化 / オリエンタリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「ナショナリズムと『文明的』自己像形成をめぐる現象」というテーマについて、比較・歴史社会学的考察を行うことを目的とした。第3年目である本年は、論文等が発行(竹内里欧「オリエンタリズム」西村大志・松浦雄介編著『映画は社会学する』(法律文化社 2016年7月)、竹内里欧「「近代主義の残像」としてのフィンランド教育ブーム」佐藤卓己他編『岩波講座 現代 第8巻』(岩波書店 2016年7月)等)された。また、公開セミナーにおいて、発表(竹内里欧「ポスト近代社会に残る近代主義の「痕跡」――フィンランド教育ブームにみる」(京都大学大学院文学研究科 アジア親密圏/公共圏教育研究センターによる公開セミナー「2016年度第1回 親密圏/公共圏セミナー」2016年 6月29日)を行った。特に、日本社会におけるフィンランド教育ブームに関する検討では、フィンランド教育ブームが日本社会の自己像や他者像の在り方、自己や他者へのどのような願望を反映しているかについて考察した。その結果、欧米に対する幻想が崩れる中で、「学力」「能力」の転換と関係しつつ、「先進的」「文明的」でオルタナティブな理想像として、フィンランド教育モデルが必要とされてきた社会的背景について明らかになった。また、事典項目の執筆(竹内里欧「子どもの発見」『教育社会学事典』(丸善出版 近刊))、放送大学講義にゲストとして参加(「教育文化の社会学(’17)」(稲垣恭子))等も行った。また、昭和初期を中心に活躍し、「西洋」への憧れを喚起し、「文明的」・「合理的」な価値観や近代日本社会における「紳士(ジェントルマンシップ)」という理想像の普及において強い影響力をもった小説家佐々木邦について、現在論文を準備中(『新・教職教養シリーズ2020 第12巻 社会と教育』に収録予定)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第3年目である本年は、論文等が発行(竹内里欧「オリエンタリズム」西村大志・松浦雄介編著『映画は社会学する』(法律文化社 2016年7月)、竹内里欧「「近代主義の残像」としてのフィンランド教育ブーム」佐藤卓己他編『岩波講座 現代 第8巻 学習する社会の明日』(岩波書店 2016年7月)等)され、公開セミナーで発表(竹内里欧「ポスト近代社会に残る近代主義の「痕跡」――フィンランド教育ブームにみる」(京都大学大学院文学研究科 アジア親密圏/公共圏教育研究センターによる公開セミナー「2016年度第1回 親密圏/公共圏セミナー」 2016年 6月29日)を行った。これら論文や発表では、自己像と他者像のあり方について理論的考察を深めるとともに、「文明的」「先進的」モデルとしてのフィンランド社会と日本社会の関係について検討を行った。また、事典項目の執筆(竹内里欧「子どもの発見」日本教育社会学会編『教育社会学事典』(丸善出版 近刊))では、近代社会と子ども像の関係について考察を行った。また、大正末から昭和初期を中心に活躍し、「西洋風」のハイカラな生活イメージや、合理的・文明的な価値観、「紳士(ジェントルマンシップ)」という理想像の普及にあたって強い影響力をもった小説家佐々木邦について研究をすすめている(稲垣恭子・岩井八郎・佐藤卓己編著『新・教職教養シリーズ2020 第12巻 社会と教育』(協同出版 近刊)に収録・刊行予定である。また、2017年度放送大学「教育文化の社会学(’17)」(稲垣恭子)においてこのテーマについてゲストとして講義に参加した)。このように研究活動を行っているが、育児等の理由により、当初の計画どおりに十分に遂行できなかった作業(資料収集のための出張、学会参加等)があるため、科研費の延長を申請することとなった(承認は既に受けている)。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、「ナショナリズムと『文明的』自己像形成をめぐる現象」というテーマについて、比較・歴史社会学的考察を行うことを目的とするものである。本年は、第3年目にあたるが、第3年目に当初の計画より不足のあった作業としては、体調不良等により、出張を当初の計画通り遂行することが困難であったことがある。ある程度は昨年度より改善したものの、体調不良等により、学会発表・学会参加・資料収集を十分に行うことが難しかった(このため、科研費の延長を申請し、承認を既に受けている)。第4年度は、学会参加・研究会参加・学会発表を行う機会をより増やし、最近の研究動向についてより理解を深めるとともに、自身の研究について多くのコメントや批判を受けるようにつとめたい。学会参加については、関西社会学会(於日本)、日本社会学会(於日本)、日本教育社会学会(於日本)等への参加を予定している。研究会参加については、ジェンダー研究会(於日本)、現代社会学研究会(於日本)等への参加を予定している。これらの活動により前年度までの不足を補いたい。資料収集については、日本近代文学館、国立国会図書館、東京大学明治新聞雑誌文庫等への出張を考えている。また、現在準備中の論文(近代日本における「ジェントルマンシップ」という理想像の普及にかんする論文)についてまとめ、図書の一部として発表する予定である(『新・教職教養シリーズ2020 第12巻 社会と教育』(協同出版 近刊)に収録予定)。また、第4年度は最終年度にあたるため、今までの研究成果を整理し、最終成果報告書としてまとめる作業を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、雑誌等資料(日本近代文学館、国立国会図書館等所蔵資料)の収集・分析において、研究の遂行に予想より時間を要したためである。また、育児、体調不良等の理由により、長期の出張(学会参加、研究会参加、日本近代文学館、東京大学明治新聞雑誌文庫、国立国会図書館等へ出張を行うことによる資料収集活動等)を当初の予定のように十分には行えなかったためである。こうしたことから、今年度終わりに、科研費延長の申請を行った。科研費延長の申請については、既に承認をいただいている。次年度は、これまでに不足のあった作業(資料収集、学会参加、研究会参加)を中心に活動をすすめていく予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、昨年度よりは改善したものの今年度に不足のあった作業(学会参加、研究会参加、資料収集)を中心にしつつ研究活動を行っていく予定である。学会参加、研究会参加について、具体的には、関西社会学会(於日本)、日本社会学会(於日本)、日本教育社会学会(於日本)、ジェンダー研究会(於日本)等への参加を予定している。資料収集については、日本近代文学館、国立国会図書館等への資料収集を目的とした出張を行うことを考えている。また、現在執筆中の論文(近代日本社会における「ジェントルマンシップ」という理想像の普及にかんするもの)を完成させ、図書の一部として刊行する予定である(『新・教職教養シリーズ2020 第12巻』(近刊)に収録予定)。また、次年度は最終年度にあたるため、これまでの成果をとりまとめ、他の研究者から批判やコメントをいただいたうえで、最終的な成果報告書を執筆することを考えている。
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