2014 Fiscal Year Research-status Report
国際サミットをめぐるアクターの比較分析と理論構築に関する社会学的研究
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25780328
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
濱西 栄司 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 講師 (30609607)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会運動 / グローバル化 / サミット / 経験運動 / アラン・トゥレーヌ / 新しい社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26(2014)年度は、前年度の成果(サミット・プロテストの争点・アクター・レパートリーの変化と4つの分裂の明確化など)を論考にまとめつつ(2015年度に共著本として出版予定)、その制度構造レベルにおけるメカニズムを明らかにするために、まず(1)福祉レジーム論と新しい社会運動(NSM)、ソーシャル・ガヴァナンス(SG)、新しい社会的リスクに関する先行研究、及びNSMの多様性、福祉レジームの制度的受苦構造とSGを構成するアクター群に関する筆者の研究を、総括するかたちで、新たな説明モデル(複合レジームモデル)を構築し、2014年7月に世界社会学会議(国際社会学会RC47)において報告を行なった。 また(2)サミット・プロテストを支えたヨーロッパの若者の自律スペース・自治区運動の歴史についても研究報告をおこない、日本の状況と比較した。 (3)またサミット・プロテストの歴史的な背景と現代社会学理論の関係を検討すべく、ヨーロッパの戦後経済成長、冷戦状況、グローバル化状況とフランス社会学(とくにトゥレーヌらの社会学及び構造主義・社会史の影響を受けたフーコー、ブルデューらの理論)の対応関係を検討した(2015年度に共著本として出版予定)。 (4)さらにサミット・プロテストにおける具体的なアクションの展開を時間・空間的にとらえるために、トゥレーヌ派S.Tabboni(及びアリエス、ギュルヴィッチ、アナール学派)の社会的時間論の検討をおこない、個人的/集合的な時間経験の考察を進めた(2015年度学会招聘報告予定)。 (5)また、『社会学理論応用辞典』に「新しい社会運動論」・「経験運動」概念に関する新たな解説を寄稿した(2015-16年度出版予定)。 以上の研究成果を取り込む形で、引き続き、サミット・プロテストとトゥレーヌ派社会学に関する単著本を執筆している(2015年度出版予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に進捗予定の研究実施計画のうち、(1)制度構造とサミット・プロテストの関係性については、複合レジームモデルの構築とトゥレーヌ派理論の中範囲理論化を通して順調に進めることができた。世界社会学会議での報告等が評価されたことで、その後、フランス国立社会科学高等研究院・社会学的介入分析センター(CADIS)や国際社会学会RC47におけるトゥレーヌ派理論についての国際的な共同研究への招聘等が決まっている。 (2)ガヴァナンスの多様性、及び若年者雇用等の制度構造とサミット・プロテストの関係性については、ヨーロッパの戦後史や若者の同時代史と社会学理論とを結びつける研究を進めてきた。その成果が、同時代史と社会学史を結びつける新たな共著本の執筆につながっている。 (3)集合行為参加者のアイデンティティや経験についての研究は、経験運動・集合的経験論、及びS.Tabboniの社会的時間論の検討を通して進められた。その成果が、社会学理論応用辞典での「新しい社会運動論」「経験運動」等の辞書項目の執筆依頼につながり、また次年度社会学史学会大会シンポジウムでの招聘報告へとつながっている。 このように新たな国際共同研究や招聘報告・研究依頼の機会が増えた分、サミット・プロテストとトゥレーヌ派社会学に関する単著本の出版が次年度に繰り越すことになったことは計画外のことであったが、全体として、研究は現在まで、当初の計画通りおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
国際社会学会RC47理事の活動(2010-14、2014-18年度)を通して、また2014年世界社会学会議(横浜)を経て、海外研究者・研究機関からの共同研究や共著論文、国際シンポジウム開催などの提案が大幅に増加している状況にある。この機会を生かして、海外の研究者とのコラボレーションをより積極的に進めることで、国際的な発信やインパクトを高めていく。 同時に現段階での本研究の成果を総括する単著本の出版にいっそう力を入れるとともに、海外からのフィードバックを取り入れる形で英訳本の出版をおこなうことも視野に入れつつ研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
予定していた国内外学会への出張を、校務によりキャンセルせざるを得なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会への招聘と国際共同研究プロジェクトの会合への出席の機会が、当初計画以上に、増えるため、その分の旅費に充当する。
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Research Products
(3 results)