2015 Fiscal Year Research-status Report
地域における障害者の不利益経験の非制度的位相の共有と解消の技法に関する研究
Project/Area Number |
25780331
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Research Institution | Nagoya Sangyo University |
Principal Investigator |
丸岡 稔典 名古屋産業大学, 環境情報学部, 講師 (20455380)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スティグマ / アイデンティティ / 対話 / 重度肢体不自由者 / 自立生活 / まちづくり運動 / 介助 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①障害者の不利益経験の非制度的位相を解明、②地域での相互行為の中でそれを障害者と健常者の間で共有し、解消する技法の提出、③技法の有効性の評価にある。そのために、1)障害者の生活史の聞き取り、2)地域の市民団体の活動史分析、3)地域の市民団体への参与観察を実施する。 引き続き、世田谷区の障害者団体の活動史の分析を進めた。結果、世田谷区では1)他人よる介助を受けながらアパート暮らしをしつつ、介助の社会的労働化を求める自立生活運動と、2)障害者と地域住民が対等な立場で参加し、障害者への理解の促進を目指すまちづくり運動の二つの運動が展開されており、これらの運動では単に親元や施設以外の場所ではなく、住民と障害者が出会い、関係が形成される空間として、さらに障害者と住民の自発的な参加や学習により、障害者が他人の介助を受けて生活し、参加することが可能な空間として、新たな地域像が構想されていたことが明らかとなった。 また、重度身体障害者を中心とした芝居づくりグループの活動の分析を進めた。結果、芝居では、障害者が障害の現れた身体を積極的に観客に開示し、それを周囲が受け止める様子が表現され、障害者が障害を隠さずに地域で暮らす様子とそれを受け止める障害者と健常者からなる芝居作り集団のコミュニティの存在がメッセージとなっていた。また、芝居作りの過程では、メンバー間の対等性と差異を常に確認しながら、一人一人の異なる障害をめぐる経験や出来事、ならびに経験に関わる人物の行動や気持ち、それらを支える思考について、各メンバーが自分の経験を対応させながら理解を深める相互行為がなされていた。芝居の内容と芝居作りの過程における経験の理解のあり方からは、障害の非制度的位相をめぐる課題を可視化し、障害者と健常者の双方が社会の構成員一人一人が向き合うべき課題として共有していく可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はこれまでの研究成果をまとめ、学術誌ならびに学会で公表すること、及び一般市民に公表することで成果の社会的な還元を図ること、に力点を置いた。また世田谷区内の障害者の生活史の聞き取りの結果の分析を進めた。 成果の取りまとめと分析に時間を要したため、世田谷区以外の地域の障害者への聞き取り調査と障害者団体の活動史の分析を十分に行うことができなかった。 また、研究代表者の身分の異動、体調等の事情により研究活動に十分な時間を取れない時期があったため、研究期間を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
世田谷区以外の地域の障害者への聞き取り調査と障害者団体の活動史の分析を進め、世田谷と他地域の状況の比較をおこなう。 研究成果を学術誌ならびに学会で公表する。 研究成果を一般市民に公表し、成果の社会的な還元を図る。
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Causes of Carryover |
成果の取りまとめと分析に時間を要したため、世田谷区以外の地域の障害者への聞き取り調査と障害者団体の活動史の分析を十分に行うことができなかった。 また、研究代表者の身分の異動、体調等により研究活動に十分な時間を取れない時期があったため、研究機関を延長した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
障害者への聞き取り調査のための旅費と謝金、障害者団体の活動史の分析の文献資料の購入などに使用予定である。 加えて、研究成果公表、情報収集意見交換のための国内外の学会・会議への参加旅費に使用予定である。
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