2013 Fiscal Year Research-status Report
ネグレクト防止に向けた学校ソーシャルワーク実践に関する基礎的研究
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25780343
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
奥村 賢一 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (90584699)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 学校ソーシャルワーク / ネグレクト |
Research Abstract |
1.具体的内容 1)文献研究(平成25年4月~平成26年3月)。平成25年度に行った文献研究は、①学校ソーシャルワーク(他領域も含む)、②ネグレクト(主に学齢期の子ども)、③家族支援を主要テーマとして国内外の論文、専門書、報告書等の収集及び比較研究を行った。 2)インタビュー調査(平成25年10月26日~27日)。大阪市(初日)と京都市(2日目)で調査を実施した。なお、調査方法については、先方の都合もあり協議の結果、アンケート形式で行うことになった。大阪府、京都府、滋賀県、愛知県内のスクールソーシャルワーカーならびにスクールソーシャルワーカー・スーパーバイザーを対象にネグレクト児童に対する学校ソーシャルワーク実践の実態について回答を得た。 3)ヒアリング調査(平成26年3月25日~26日)。福岡市教育委員会所属のスクールソーシャルワーカー12名を対象にヒアリング調査を行った。当初は、アンケート調査を実施する予定にしていたが、先のインタビュー調査の変更に伴い研究デザインの再考を行って、ネグレクト児童に対する支援状況について個別にヒアリング調査を行う事例研究として実施した。 2.意義 平成25年度に実施した各調査及び研究により、学校現場においてネグレクト児童に対する支援の必要性が極めて高いことがアンケート調査で明らかとなった。一方、文献研究では学校現場でのネグレクト支援の実例が少なく、組織体制をはじめとする諸課題により十分な支援体制が整備されていない現状と課題を整理することができた。 3.重要性 先行研究において、ネグレクトが不登校をはじめとする教育問題と密接な関連があることが示されるなか、ネグレクト防止に向けた学校現場におけるソーシャルワーク実践を研究していくことは、子どもの教育の機会を保障していくうえで極めて重要な研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献研究については、当初の計画どおり順調に進めることができている。それらの結果内容に基づいて、アンケートやヒアリングの各調査項目の整理や研究デザインの再考に役立てることができた。 インタビュー調査は、対象者の都合等によりアンケート調査に変更を余儀なくされたが、調査項目については当初に予定していた内容をほぼ把握することができたため、概ね調査目的を達成することができたものと捉えている。なお、スケジュールの都合が合わず平成25年度に実施することができなかった福岡市と熊本県の各教育委員会所属のスクールソーシャルワーカーについては、平成26年度に同様の方法にて実施する予定にしている。 平成25年度に実施したヒアリング調査は、当初計画では平成26年度に実施する予定であったアンケート調査を修正して行ったものである。調査の実施方法等や時期などを検討・協議した結果、福岡市教育委員会の全面的な協力により、12名のスクールソーシャルワーカーを対象とした個別のヒアリング調査に切り替えて前倒しで行うことができた。スクールソーシャルワーカー1名に対して、それぞれ2事例を提供してもらった。具体的には、ネグレクト児童に対する支援で学校生活状況が改善した1事例と未改善な状況が続く1事例であり、ケースマネジメントプロセスに沿って細部にまでヒアリングを行うことができた。これは当初、福岡県全体で実施しようとしていたアンケート調査の内容よりも、さらに踏み込んだ内容であり、計画していたよりも貴重なデータ収集ができたため、研究の目的を達成したものと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、以下4点を中心に推進していく。 1.文献研究。平成25年度に引き続き先行研究に関する情報収集及び分析を行い、それらの集積から専門的な知見を広めていくよう努める。 2.アンケート調査。平成25年度に未実施であった福岡市教育委員会ならびに熊本県教育委員会のスクールソーシャルワーカーを対象とした調査を実施する。調査方法については、前年度の変更に対応する形でアンケート調査とする。 3.事例研究。平成25年度に実施した福岡市教育委員会のスクールソーシャルワーカーを対象としたヒアリング調査の結果について、MAXqdaソフトを用いた質的データ分析を行う。 4.海外視察調査。児童虐待及びスクールソーシャルワークの先進地域であるカナダを視察して、ネグレクト児童に対するスクールソーシャルワーク実践状況についてヒアリング調査を行う。具体的には、オンタリオ州トロント市内の小学校を訪問して、スクールソーシャルワーカー及び学校関係者に対して直接的な聴き取りを行いたいと考えている。本調査は、当初の研究計画には含まれていなかったが、平成25年度に福岡市教育委員会において踏み込んだヒアリング調査を実施することができたことで、日本とカナダのスクールソーシャルワーカーの実践内容について比較研究を行うことができると判断した。本調査により得られる研究成果が、わが国におけるネグレクト防止に向けた学校ソーシャルワーク実践の体系化に向けたモデルになると考え、そのことが研究のさらなる可能性と有用性を高めるものとして研究計画を変更するものである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の支出費目において、当初の予定よりも金額が下回った物品があり、最終的には39円の残額が生じた。 次年度においては、少額な物品等でも事前に見積り確認を徹底して行い、計画的に予算の執行を行う。
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Research Products
(1 results)