2014 Fiscal Year Research-status Report
自殺予防における福祉モデルの構築―自殺を企図する人の「居場所」の創出に着目して
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25780358
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
市瀬 晶子 関西学院大学, 人間福祉学部, 助教 (50632361)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 対話的実践 / オープン・ダイアログ / ナラティブモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自殺予防における対話的実践の調査を行い、自殺の問題を個人に還元する個人モデルではなく、個人と社会との関係に介入していく福祉のモデルでのアプローチを自殺予防における一つの理論、実践モデルとして構築することを目的としている。 平成26年度は、前年度に引き続き、理論的枠組みの検討と対話的実践の調査を行った。理論的枠組みの検討では、生態学モデルの枠組みを用いて、大学生の自殺予防の課題をどのように個人と環境との関係性の問題として捉え、介入していくのか、大学生を対象としたインタビュー調査に基づいて検討し、論文として報告した。対話的実践の調査では、アメリカ・マサチューセッツ州の精神障害をもつ当事者の団体であるNational Empowerment Centerが開発した、情緒的危機への対応についての一般教育プログラムEmotionalCPRについて開発者の一人にインタビュー調査を行った。また、マサチューセッツ州東部13市町村の精神保健福祉サービスを担っている民間団体のAdvocatesでは、自殺企図を含む危機介入にフィンランドのオープン・ダイアログの実践を取り入れており、精神科医、ソーシャルワーカー、ピアスペシャリスト10名に対話的実践のインタビュー調査を行った。現在はインタビュー調査で得られたデータの分析の段階であるが、対話的実践の実態と実践者による評価のデータが得られたことは、今後二次調査を行い、対話的実践の理論的意義と臨床的可能性を検討していく上で貴重な材料となると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はミクロの次元での自殺予防の援助実践研究とマクロの次元での公共福祉論における中間団体の役割の検討という2つの次元を対象として研究を計画していたが、現在は、対人援助を中心とした実践の研究を進めており、中間団体による自殺予防実践のマクロの次元における検討はまだ進められていないため、「研究の目的」の達成度はやや遅れている。 27年度は対話的実践の二次調査を計画しており、調査対象が決定次第、当該地域の精神保健福祉制度、政策において中間団体による実践の役割がどのように位置づけられているのか、マクロの次元における検討も進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、National Empowerment Center のEmotionalCPRのプログラムの実践、フィンランドのオープン・ダイアログの実践を適用しているAdvocatesの実践についてのインタビュー調査の分析に取りかかっている。この一次調査から対話的援助実践の理論的枠組みと実践をさらに明らかにするための調査設計を行い、二次調査として実践者へのインタビュー調査もしくはフィールドでの関与観察を計画している。そして、研究成果を随時、研究発表、論文発表にて報告していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画では調査の際の専門知識の提供に対する謝金として、25年度、26年度ともに60,000円を予算に計上していたが、研究を遂行する上で調査を行った対象団体の数が当初の計画よりも少なくなり、謝金の支出が25年度は14,703円、26年度は48,368円と予算を下回ったためと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は二次調査を予定しているため、調査のための旅費、専門知識に提供に対する謝金として使用したいと考えている。
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