2016 Fiscal Year Research-status Report
自殺予防における福祉モデルの構築―自殺を企図する人の「居場所」の創出に着目して
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25780358
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
市瀬 晶子 関西学院大学, 人間福祉学部, 講師 (50632361)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 対話的アプローチ / 当事者 / オープン・ダイアローグ / Emotional CPR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究課題は、自殺の問題を個人と環境との関係性の問題として捉え、関係性に介入していく福祉モデルでの自殺予防のアプローチを構築することである。これまでの研究では、生態学モデル、対話的アプローチに着目し、個人と環境の関係性に介入していく実践モデルの理論的な枠組みを明らかにしてきた。 平成28年度は、希死念慮・自殺念慮を持ったことがある、または自殺を企図したことのある人がこれまでをどのように生き抜いてきたのか、何が支援となったのかを探るために、路上生活を経験し、希死念慮・自殺念慮を持ったことのある人、自殺企図をしたことのある人の5名の当事者を対象にライフ・ストーリー・インタビュー調査を実施した。今後、当事者のライフ・ストーリーをもとに、希死念慮・自殺念慮を持った人、自殺企図をしたことのある人がNPO法人の支援を受けながら、どのように生きる意味を見いだしていったのか分析を進めていく予定である。また次の段階として、当事者のライフ・ストーリーから明らかになった知見について、対話的アプローチの理論枠組みを用いて分析を加えることで、対話的アプローチの自殺予防への援用可能性を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、個人と環境の関係性に介入していく自殺予防のモデルとして、対話的アプローチに着目してきた。平成26年度までに対話的アプローチの具体的な実践例として、フィンランドの「オープン・ダイアローグ」、アメリカ・マサチューセッツ州の精神障害をもつ当事者団体の開発したEmotional CPRを取り上げ、開発者と実践者にインタビュー調査を行い、対話的アプローチの理論枠組みと実践方法を明らかにしてきた。 当初の予定では、平成28年7~8月に希死念慮・自殺念慮を持ったことがある、または自殺を企図したことのある当事者にインタビュー調査を行う予定であったが、研究代表者の体調不良のために調査の実施が29年3月に遅れてしまった。 これまでは1)実践モデルの枠組みを明らかにするための調査、2)希死念慮・自殺念慮を持った人、自殺企図をしたことのある人が実際にこれまでをどのように生き抜いてきたのか実態の調査という2つの調査を進めてきた。平成29年度が最終年度となるため、2つの調査を通して明らかになったことをまとめ、自殺予防の一つのモデルとして、対話的アプローチを理論的、実践的に提示したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度が最終年度となるため、これまでの研究を通して明らかになったことを論文にしていく。第一に、「オープン・ダイアローグ」、Emotional CPRを実践例とする対話的アプローチの理論、実践的枠組みを提示する。第二に、かつて希死念慮・自殺念慮を持った、自殺企図をしたことがあり、現在NPO法人で活動する当事者のライフ・ストーリーの分析から、対話的アプローチの援用可能性を検討する。第三に、現在、世界や日本で実施されている自殺予防モデルの課題を検討し、対話的アプローチの意義を考察する。以上の3点を論文にすることによって、本研究の研究成果を報告したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初、平成28年7~8月の間に当事者を対象としたインタビュー調査を実施する予定であった。しかし、研究代表者の体調不良のために調査の実施が平成29年3月に遅れ、調査のための旅費、謝金、テープ起こしなどの諸費用を平成29年度に支出することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、インタビュー調査の分析を進めていくが、調査協力者の承諾が得られれば場合によって追加調査を実施する予定であり、調査にかかる旅費、謝礼に使用する。また、研究成果を報告するための学会参加費、旅費、論文投稿料等に使用する。
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