2014 Fiscal Year Research-status Report
具体物を用いた教授の妨害的作用とその克服に関する教育心理学的研究
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25780384
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
佐藤 誠子 石巻専修大学, 人間学部, 助教 (20633655)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学習過程 / 具体物による教授 |
Outline of Annual Research Achievements |
具体物による教授は学習者にとって抽象的世界の理解を容易にするという利点がある反面,後続の課題解決を阻害してしまう側面があることが先行研究により示されている。では,その積極的効果はどのような条件のもとで保証されるのか。本年度は,具体物による学習効果について,学習過程における学習者の理解の様相に焦点を当てて検討をおこなった。具体的には,大学生5名を対象に,学習課題として図形の相似拡大場面における面積変化をとりあげ,そこで成立するルール(図形をk倍に相似拡大すると,その面積はkの2乗倍になる)について,粒シールを拡大前後の図形に敷き詰めるという具体物操作をとおして教授した。その際,具体物操作を通して気づいたことや確認したことなどを学習者に言語報告してもらい,その理解の様相を検討した。その後,直後テストとして,図形の相似拡大・縮小場面における面積判断を求めた。分析対象者(4名)のうち,AとBは学習セッション内で比例判断からルールによる判断に変容したが,その後の直後テストでは,Bはすべての課題でルールを適用できた一方,Aはほとんどの課題で適用に失敗していた。そこで,AとBの学習過程を分析したところ,Aのルール適用の根拠は「平面上の図形だから」というものであり,具体物操作で確認していたのは面積変化のみであった。それに対して,Bはルール適用の根拠として「(拡大後はどの長さも)全部k倍になるのは変わらないので」と平面上の「長さ」の変化にも着目していた。具体物操作では,面積変化だけでなく,図形の各辺が実際にk倍に拡大されていることも確認していた。このことから,具体物による積極的効果は,単に抽象的概念の理解を容易にすることにあるというよりも,学習者自身が,具体物を手がかりにルールの適用結果の妥当性を確認するという活動の中に表れることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では小学生を対象とした実験授業を想定していたが,前年度の理論的検討をふまえ,大学生を対象とした調査に変更した。学習過程における理解の様相をより詳細に検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき,扱う学習課題や材料等について,研究者や現職教員らが参加する研究会等にて相互検討をおこないながら進める。また,最終年度にむけて,研究成果を学会誌および国内学会にて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
参加予定の研究会および学会が近郊で実施されたため,旅費を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究課題に関連する教授学習現場の現状視察および研究成果の発表のため,旅費として使用する予定である。
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