2015 Fiscal Year Annual Research Report
具体物を用いた教授の妨害的作用とその克服に関する教育心理学的研究
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25780384
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
佐藤 誠子 石巻専修大学, 人間学部, 助教 (20633655)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学習者による「まとめ」 / 抽象化 / 授業過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
H25年度に行った先行研究のレビューから,具体物による妨害的作用は,学習者が学習のターゲットとなる構造の読み取りに失敗した場合に表れることが示唆された。また,H26年度に実施した調査から,具体物による積極的効果は,学習者自身が具体物を手がかりにルールの適用結果の妥当性を確認するという活動の中に表れることが示唆された。これらの結果から,具体物を用いた教授の効果は,学習過程における学習者の具体物に対する理解のありかたによって左右されることがうかがえた。 本年度は,具体物を用いた算数授業を分析し,学習過程における学習者の理解の様相と後続の課題解決との関連について検討した。具体的には,小学6年生29名を対象とした面積の授業を取りあげ,学習者の理解の様相の指標として学習者の授業後の「まとめ」の内容に着目した。そこでの学習課題は「平行四辺形の求積公式の操作」であり,教材として等周長変形課題および等積変形課題(工藤・白井,1991)が選択された。授業では「底辺が同じとき,高さが変わると面積も変わる」という公式の操作の理解を達成させるために,等周長変形および等積変形に伴う面積変化をあらわす具体物モデルが用いられた。授業過程および事後・遅延テスト結果を分析したところ,1)教授者側が数学的概念に焦点化したまとめを提示しても,学習者の理解は具体物の現象的理解(e.g. 平行四辺形をおしつぶすと面積が変わる)にとどまることがあり,そうした場合,後続の課題解決が阻害されること,2)後続の課題解決が促進されるのは,学習者自身が具体物の現象的理解を数学的概念に抽象化し,具体物操作に関連づけて理解できたときであることが明らかになった。このことから,具体物を用いた教授学習場面においては,教授者は学習者の理解を学習者の「まとめ」や発言等により把握し,それを踏まえて教授法を調整していく必要性が示唆された。
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