2014 Fiscal Year Research-status Report
ニホンザルにみられる寛容性の個体差と地域差―行動関連遺伝子に注目して―
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25780389
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 一憲 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (80506999)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 寛容性 / 個体差 / ニホンザル / 協力行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
全国のニホンザル集団の中でも特異的に寛容な社会構造を持つ淡路島ニホンザル集団(兵庫県洲本市)で観察された事例をまとめた。neglectを受け衰弱した生後40日齢の赤ん坊に対して、母ザルではない成体メスや第1位オスが複数日にわたって運搬やinfant handlingを行った事例、出産直後の成体メスが実子に加え養子をadoptionする事例が比較的頻繁に見られ、中には実子が死亡した後も養子を養育し続けそのまま成長した事例、3個体以上が同時に毛づくろいを行う関わる同時毛づくろいが頻繁に生じ、最大で7個体が同時に毛づくろいに関わった事例などが確認された。これらの観察事例は、研究代表者が長期縦断的に調査を継続している勝山ニホンザル集団(岡山県真庭市)では生起しにくい、または生起しない行動であり、淡路島集団の個体がもつ寛容性を反映していると考えられた。 淡路島ニホンザル集団、勝山ニホンザル集団(岡山県真庭市)、そして飼育個体を対象に、協力行動課題を設定し、実験を行った。先行研究において、協力行動の成立には、個体間の寛容性が必要になることが指摘されている。特異的に寛容な社会構造を持つ淡路島集団においては、協力行動課題が成功しやすいことが予測される。現在も行っているデータ収集と解析を来年度も継続し、寛容性の地域差そして個体差が協力行動与える影響を検討する。 個体情報の収集とデータベースの作成を行った。来年度は糞や尿の収集と遺伝子型の解析をさらに進めて、個体識別情報、行動データ、遺伝子データをデータベースに入力することでデータの整理・統合を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな実験を計画・実施し、データの収集が順調に進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
淡路島集団に加えて、他地域のニホンザル集団(勝山集団、小豆島集団)において同様の行動実験を行いデータの収集を行う。同時並行して、糞や尿の収集を行い遺伝子情報を解析・収集する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は順調に研究計画を遂行したが、平成25年度の積み残し(個体識別の困難さによる遺伝子試料収集の遅れ)が存在するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度はデータベースの積極的な利用によって、効率的な試料収集と解析を行う。
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