2014 Fiscal Year Research-status Report
親の養育態度が子どもの社会脳の発達に及ぼす生物学的基盤と世代間連鎖
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25780391
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
西川 里織 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 特任助教 (40599213)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メンタルヘルス / 養育 / 愛着 / 遺伝子多型 / 発達 / 顔認知 / 社会脳 / 問題行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
子どものコミュニケーション能力や社会性の欠如という現代社会での問題を背景に、研究の主な目的は、①遺伝子多型(5HTTLPR、 DRD4、 COMTなど)や環境 (親の養育スタイル) が子どものメンタルヘルスにそれぞれ独立的に影響するのか、環境(養育)と相互に作用するかを調べる。それにより、子どもの社会性の心理学的・生物学的基盤に迫ることを目的とする。まず、幼少期に受けた親の養育と現在の不安感にも作用していることが報告されていることから、COMT(Catechol-O-methyltransferase)遺伝子多型に着目し、子どものメンタルヘルス問題尺度に関するCOMT遺伝子の多型を比較した。そして、COMT遺伝子多型と環境(両親の養育態度)が子どものメンタルヘルスに相互に影響しているか調べた。 現在までの主な結果は、COMT遺伝子多型は不安感や注意力の欠陥、内向的問題に独立的に影響すると出た。遺伝子と環境の相互作用もまた子どものメンタルヘルスに影響していることが示唆された。養育態度では両親の性別によって、子どもの問題行動に相互に作用、または影響の仕方が違ってきた。COMT遺伝子のAG/GG群では父親や母親からの拒絶感が高いグループが低いグループに比べ、不安や落ち込み注意の問題などの得点が高く出た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の現在までの達成度は、データ収集を行い遺伝子解析と質問紙の結果をまとめ、日本心理学会でのポスター発表、ヨーロッパ心理学会での口頭発表の予定、論文一編(in press)発表することから、概ね順調に進展していると思われる。今年度中にあと一編論文を執筆するために、データのサンプル数を増やしたり、顔認知課題の行動実験を行っている途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,さらに大きなサンプル数での検討を行う必要性があるので、今年度秋をめどにしてデータを追加することが必要。質問紙と口腔内粘膜データに加え、子どもの保護者から承諾を得られた場合は、タブレットパソコンで顔認知機能を測定する行動実験を行っている。 現在は、セトロニントランスポーター遺伝子多型を解析を終わるところで、遺伝子データを出したら構造方程式モデリング(SEM)を用いて遺伝子x養育の相互作用が子供のメンタルヘルスに与える影響を調べる予定である。 それらの結果をまとめて、7月のヨーロッパ心理学会で発表する予定である。さらにデータがそろったら秋頃に論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
見込んでいた、広島大学付属学校全校から研究協力の承諾をもらえなかったため、謝金での未使用額が生じた。昨年度は、本研究内容に適した国際学会が開催されなかったため国際学会参加費用の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①国際学会参加費、引き続き、②実験の参加者の謝金、③遺伝子解析費用として使用する予定。
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