2013 Fiscal Year Research-status Report
被排斥者への共感プロセスにおける心理的痛みの伝染と制御
Project/Area Number |
25780399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島 健一郎 広島大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (20587480)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 共感 / 社会的排斥 / 心理的痛みの伝染 |
Research Abstract |
平成25年度は以下の2点について実施・検討を行った。まず,前年度に行った本課題の予備的実験について詳細な分析を行った。主な成果として,被排斥者の痛みを推測する程度と共感する側の個人が知覚した心理的痛みの程度に正の相関が認められた。そして,知覚した痛みがネガティブ感情を引き起こす結果として,共感する側の個人の不適応反応への傾性が強まることが示された。これは被排斥者への共感によって生じる心理的痛みの伝染メカニズムを示している。さらに,追加分析によって,この影響過程は抑うつ傾向が強い個人において顕著に認められることが示唆された。以上の結果に基づく研究が発達研究(2014年)に掲載されることが決定している。 次に,女子短期大学生を対象に集団一斉教示による質問紙実験を実施した。上述の予備実験の結果を踏まえてのものである。Meyer et al. (2012)は,近しい他者が排斥された場面を観察するときに生じる脳反応が,被排斥時の脳反応と類似していることを明らかにしている。具体的には,前部帯状回背側部の賦活が共通していることが示されている。これは,被排斥者が近しい人である場合に心理的痛みの伝染が生じることを示唆している。予備実験ではクラスメイトが排斥されている場面を実験刺激として用いていた。このため,伝染が生じたと考察される。この点について精緻な検討を行うために,予備実験と同一の刺激を用いた上で,実験参加者をクラスメイト以外とする質問紙実験を実施した。平成26年度はこの実験結果について学会発表を行った上で論文を投稿する予定にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題遂行の初年度である本年度より,本課題の根幹をなす心理的痛みの伝染メカニズムについて一定の妥当性のある結果を得た。そして,その研究が投稿論文として受理された。さらに,妥当性を補強するための質問紙実験を実施した。いずれも申請時の計画より順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように初年度の研究遂行は,申請時の計画より順調に進展した。今後もこれまでの成果を踏まえて,被排斥者への共感に伴う心理的痛みの伝染について検討を重ねていく。研究を行っていく上で,特段の問題点は見当たらないと考えている。次年度は,初年度に行った女子短期大学生対象の質問紙実験についての分析を行いつつ,男女共学の大学に所属する学生を対象とした質問紙実験を実施する予定である。これによって,サンプルの偏りという問題点が解決される。加えて,学会発表や論文執筆を通して,他の研究者との議論を深めていきたいと考えている。初年度と同じように引き続き精力的に研究を行っていく予定である。
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