2013 Fiscal Year Research-status Report
うつ病における自殺企図の心理社会学的機序の解明と予防法の開発
Project/Area Number |
25780403
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
大里 絢子 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80597162)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大うつ病性障害 / 認知機能 / 自殺念慮 / 人格検査 |
Research Abstract |
ストレスへの対処や問題解決に密接に関係し、うつ症状の遷延化を引き起こす可能性が示唆されている大うつ病性障害(MDD)患者の認知機能障害の自殺念慮との関連を調査した。現在通院加療中のMDD患者(44.9±11.9歳、教育年数12.8±9.9年)に対し①BDI-II、②BACS-J、③JARTを行い、推定病前IQが正常域の50名に関してBACS-Jの6項目のZスコアとBDI-IIの自殺念慮の有無の関連性をt検定で検討した。その結果BACS-Jの言語記憶、ワーキングメモリ、処理速度、注意と情報処理、言語流暢性、遂行機能いずれの項目とも自殺念慮との関連は認められなかった。今回の検討からはMDD患者の認知機能評価は自殺関連行動を予測するツールとしては弱い可能性が示唆された。 また、自殺念慮と相関のある人格検査の項目を抽出する事を試みた。精神障害を有する患者に自殺のリスクが疑われても直接的に尋ねる事は時に侵襲的になる場合があるため、人格検査のような心的負担の少ない評価尺度から自殺のリスクを推測する必要もあると考えられる。大うつ病性障害と診断された患者47名に対し初診時に240項目からなる人格検査であるTCIおよびBDI-IIを施行し、人格および抑うつ症状を評価した。次にSpearmanの順位相関係数を用いてBDI-IIの自殺念慮の有無を評価する項目と相関のあるTCIの項目の抽出を試みた。その結果、設問6,9,10,15,16,22,29,58,70,88,99,104,113,114,121,122、126,138,151,175,193,196,197,221,236の25項目が自殺念慮の有無と相関する事が判明した。特に設問10,70,113,138,151,221の6項目は相関係数が±0.40以上と強い相関を示し、人格検査からでも自殺念慮の有無を推測できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに収集済みの200名に加えた新たな症例の収集数がやや滞っている。また治療開始前に施行予定であった検査に関して、患者の負担を考慮すると施行が難しい種類もあったためそれらの検査のデータ収集も滞っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に対して同意の得られた大うつ病性患者に対し、同様の心理社会学的、生物学的評価を行う。その際には患者の負担を考慮しながら検査を施行しデータ収集に努める。初診時から1年経過後にフォローアップ期間中に見られた自殺関連行動と治療開始前に評価したうつ病の重症度と自殺思考、自殺企図の既往に対して、人格傾向、遺伝子多型、内因性物質を用いて統計解析を行い、うつ病から自殺関連行動に至る因果モデルを確立する。因果モデルに基づいて自殺関連行動を高い関連を示した因子を組み合わせ、うつ病患者個々の自殺リスク因子を抽出できる自殺リスクバッテリーを作成する。次に新たな対象者に対し、作成したバッテリーを治療開始前に適用し、抽出された自殺リスク因子から対象者個々の因果モデルを同定する。
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