2015 Fiscal Year Research-status Report
告知を受けた軽度認知症患者の精神的安定に寄与する心理的要因の縦断的検討
Project/Area Number |
25780414
|
Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
荒井 佐和子 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (20610900)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 認知症 / 心理プロセス / アルツハイマー病 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,軽度認知症と病名告知を受けた患者が精神的安定を保つために重要な要因を明らかにすることである。 研究3年度の本年度は1、新規調査実施施設の確保,2、調査の実施, 3、データ解析と発表を行った。 1、H26年度の課題であった対象者の確保のため,新たに認知症専門クリニックの協力を得ることが出来,川崎医療福祉大学倫理委員会の承認も得,調査実施が可能となった。 2、調査の実施:H26年度から実施している縦断調査は対象者(3組6名)1年半の追跡調査が完了した。また,新規に開拓した上述の施設では10組20名の対象者の協力を得ることが出来,初回の調査を完了している。現在は初回調査の半年後に行う第2回調査(追跡調査)を行っている。 3、データ解析と発表:1年半の追跡調査を完了した対象者のデータに基づき,抑うつ傾向の軽度認知症者の心理的プロセスを質的分析(Trajectory Equifinality Model (TEM) )を用いて明らかにし,学会にて発表した。初回調査で抑うつ傾向であった本人は,自分の症状に向かい合う中で,自信を失い,外部との接触を回避していた。家族は,本人の物忘れの症状そのものよりも,上述のようなこれまでにない本人の行動傾向によって以前と変わった面を理解し,本人が病気であるという認識を強く持つに至った。そして第2回調査時には本人に必要だと思われる活動が家族主導で開始され,第3回調査では本人の抑うつ傾向の改善が見られた。患者の精神的安定に寄与する要因として,本人の状態をよく理解した周囲の者が主導となった活動の導入があること,そこに至るまでには,患者と家族が相互に影響しあっていることも明らかに出来た。今後は対象者数を増やして,モデルの精緻化を図る必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は調査実施施設を拡大し,当初目標としていた対象者数を満たすことが出来た。さらにH26年度から調査を開始した施設では全3回の調査を完了し,データの解析から結果公表まで行うことができた。このため,研究はおおむね順調に進展していると考えられる。ただし,本年度協力を新たに得た調査実施施設での追跡調査のため,当初予定していた調査実施期間を延長し,調査の継続と分析を進めて行く必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
予定していた対象者数の確保が達成できたため,今後は対象者の募集は終了し,新規に調査を実施している施設における追跡調査(第2回調査,第3回調査)を行う計画である。また,本年度作成したTEMの結果図を洗練させるため,現在収集中のデータを組み込み,TEMの結果図を再構成する予定である。そして,学会で結果を公表するとともにフロアとのディスカッションを通してモデルの精緻化を図り,さらに広く社会に情報発信できるよう論文投稿を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
対象者の確保に時間がかかったため,調査旅費など調査に必要な経費が次年度へ繰越となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰越分を含め,調査の実施およびデータの分析,公表のために使用する予定である。
|