2016 Fiscal Year Research-status Report
SWAP-200の日本語版作成と日本における有用性の検証研究
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25780425
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Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
鳥越 淳一 開智国際大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90635880)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | SWAP-200 / パーソナリティ障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
米国で、DSM-IVⅡ軸の代替アセスメントとして開発されたShedler-Westen Personality Procedures(通称SWAP-200)の日本語版作成を目的としている。SWAPは欧米を中心に12か国語で翻訳されており、近年本ツールでの数値を基にパーソナリティ障害について論じることが増えてきている。そうした背景からも本ツールの日本語版があることは、グローバル水準でパーソナリティ障害を論じるにあたり有用な手段となりえ、この種の研究領域にとっては有益なことだと思われる。SWAPとDSM-IVⅡ軸の診断プロセスにおける大きな違いは以下のような点が挙げられる。1)DSMが患者の自己申告を診断材料にするのに対し、SWAPは診断者/臨床家の専門的観察を基盤にしている。2)障害の特徴を診断する項目もDSMが各障害につき10項目前後であるのに対して、SWAPでは200項目を要する。3)DSMと異なりSWAPの項目はすべて日常語(非専門用語)で表現されている。4)特性の有無を尋ねるDSMと異なり、SWAPはパーソナリティの傾向を測定している。5)症状や行動に焦点を当てているDSMと異なり、SWAPは行動や症状の背後にある動機や理由についても焦点を当てている、など。こうした特徴から、診断者には広く深い専門的観察が求められており、本研究ではオリジナルの研究に沿って臨床経験3年以上を要件としている。 本年度は、臨床経験3年以上の臨床家(臨床心理士および精神科医)に、日本語版SWAPを用いて実際の担当患者を表現してもらうという調査を昨年度に引き続き行った。具体的には調査対象者が多く登録する複数の研究会のメーリングリストへ調査を呼び掛けたり、海外でSWAPが活用されている司法領域(研究会および矯正管区)への調査依頼や研究内容の説明を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本調査は、高度な専門知識を提供してもらう必要があるため、調査対象者を精神科医、臨床心理士など精神的健康に携わる専門職に限定している。また、施行には200項目をQソートで振り分けるという作業が必要であるため、通常1~2時間を割いてもらう必要がある。こうした調査対象の限定と協力負担の多さから、調査協力者を得ることそのものに時間がかかり、年々時間がおしている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、得たデータを基に論文を作成し、研究成果を公表していく予定である。また、より詳細な妥当性・信頼性の検討には、組織的な協力―たとえば、診断対象者(患者やクライエント)の同意を得て、他の性格検査との関連性を検証するなど―が不可欠なってくるため、倫理的配慮を十分に組み込んだ計画を作成し、適切な場所・機関に依頼を行う予定である。また、本ツールは、心理療法の効果研究にも活用が可能であるため、海外で行われている実証研究を参考に、縦断的な検証を行っていきたいと考えている。加えて、本ツールは海外では医療だけではなく、教育や司法矯正施設でも活用されており、今後の活用領域についても模索していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた調査が完遂できなかっため、謝金を中心に残額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に予定していた調査を実施するための謝金や調査のための移動費・旅費に使用予定である。また、調査協力者に対して調査結果のフィードバック、研究発表のための準備・交通費などに使用を予定している。
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