2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780426
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
齋藤 梓 上智大学, 総合人間科学部, 研究員 (60612108)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 性被害 / 援助要請行動 / 犯罪被害後の精神的支援 |
Research Abstract |
深刻な性被害ではPTSD等の精神的後遺症を生じる割合が高く,各種支援に加えて精神的ケアが必須である.しかし実際は,性被害者は援助要請行動が乏しく,精神的ケアになかなかつながらない.そこで本研究では,性被害者が精神的ケアにつながり,適切なケアを享受できるようになることを目的として調査を行っている. 平成25年度は,400名の大学生を対象として,性被害を受けたと仮定した場合の援助要請行動および治療選択に関して,無記名の自記式質問紙による調査を行った.援助要請行動については,援助要請態度,実際のトラウマ体験の有無,トラウマ反応の有無などの影響を受けているかを調べた.性被害者の援助要請態度については,実際の性被害者および性被害者支援にあたっている臨床心理士や他の支援者の意見を参照し,新たに尺度を作成した.治療選択については,トラウマ反応が持続していると考えた場合,投薬治療とトラウマ焦点化心理療法のどちらを選択するかを調べた.この調査結果を社会啓発,専門職研修等に活用することにより,性被害者がより援助要請行動を取りやすい環境を整えていく. また調査研究と並行して,民間被害者支援機関での性被害者支援の実践例を積み重ねた.まだ実践例の積み重ねのみではあるが,性被害者が被害後,実際にどのようなことに苦しみ,どのような支援を求めて支援機関につながったかを分析することで,今後の性被害者支援の一助になると考えている. なお,研究計画では性被害者の援助要請行動に加えて特徴的な非機能的認知についても質問紙調査を行うとしたが,平成25年度の調査では回答者の心理的負担に考慮し,援助要請行動および治療選択に絞り調査を行った.性被害後の非機能的認知については,必要に応じて別の調査を実施し検討を行っていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は性被害後の援助要請行動に関する質問紙調査の実施,および支援機関専門職を対象とした半構造化面接を行うことを計画していた.しかし,性被害後の援助要請行動に加え,性被害後の精神的ケアについて人々はどのような治療を選択するのかを調査したうえで,精神科や心理カウンセリングを含めた機関連携の調査をする必要があると考え,平成25年度には援助要請行動および治療選択に関する調査のみを実施した. しかし,平成25年度は3年計画の初年度であることや,研究計画をやや変更し,質問紙調査は予備調査を実施せず,現在の調査を本調査とすることを鑑み,計画の進行は概ね順調であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進については以下のように考えている.第一に,平成25年度に行った質問紙調査のより詳細な分析を行う.数量的解析に加え,治療選択理由については質的な検討も加える.第二に,質問紙調査の結果を踏まえて,性被害後の非機能的認知について,援助要請行動との関連を考える必要があると判断された場合に追加の調査を実施する.第三に,性被害者支援に関わった経験を一定以上有する各専門職(弁護士,精神科医,民間支援団体相談員,臨床心理士など)を対象として,インタビュー調査を実施する.その際に,質問紙調査の結果を踏まえ,各専門職の視点からはどのように性被害者を支援につなげるかの意見も聞き取りを行う.第四に,性被害者支援の実践を積み重ね,性被害者の抱える実際の困難を実例から検討する.第五に,これらの研究の結果を国内外の学会等で公表し他の研究者の意見を聞き,その上で社会啓発,専門職研修等に活用できる教材を開発する.現在行っている性被害後の治療選択についてはアメリカでの研究をもとにしており、日米の結果の比較も行いたいと考えている.なお,平成26年度にはアメリカで性被害者等の支援を行っている専門家のもとを訪ね,日本での性被害者への精神的ケアについて助言を求める予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に予定していたインタビュー調査の実施を,性被害後の援助要請行動および治療選択の結果をインタビュー項目に反映させるため,平成26年度の実施に変更した.従って,インタビュー協力者及びインタビュアーへの謝金,交通費,テープ起こし費用等として,次年度使用額が生じた.また平成26年度は国外の専門家から、性被害後の援助要請行動に関する意見を聞き取り,その上で日本での性被害者への精神的ケアに関する助言を受ける予定である. 平成26年度は,性被害者支援に関わった経験を一定以上有する専門職にインタビュー調査を実施する.そのため,インタビュー協力者への謝金,インタビュアーへの謝金,テープ起こし費用を使用する.またアメリカで性被害者支援を行っている研究者を訪ね,日本での性被害者への精神的ケアに関する助言を受ける予定であり,訪米のための費用を使用する.また,必要に応じて追加の質問紙調査を行うことも計画しているため,調査用紙印刷費やデータ入力のためのアルバイト費用なども使用する.
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Research Products
(4 results)