2015 Fiscal Year Research-status Report
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25780426
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
齋藤 梓 目白大学, 人間学部, 専任講師 (60612108)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 性暴力被害 / 心理教育 / 治療選択 / 支援機関連携 / トラウマ焦点化認知行動療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究内容】「性被害後の援助希求行動並びに治療選択に関する調査」では、「日本の女子大学生におけるPTSD治療選択傾向とその理由」を国際学会で発表した。調査結果から、米国での先行研究と同様、性被害を受けPTSDになったと仮定した場合、治療の内容およびメリットとデメリットが書かれた説明文を読んだ学生は、「治療を受けない」「薬物治療」よりも、「トラウマ焦点化心理療法」を選択する傾向が強いことが分かった。また、すでに心的外傷経験があり現在トラウマ反応が強い学生は、「治療を受けない」を選択することが多く、トラウマ体験をする以前の心理教育が重要であることが確認された。治療選択理由については、米国の参加者が「治療効果」など積極的な理由での選択が多い一方、日本の参加者は「薬物療法への不安」など消去法的な理由での選択が多くみられた。 「支援機関専門職を対象とした半構造化面接調査」では、弁護士や被害者支援機関相談員、臨床心理士にインタビューを実施した。さらに数名にインタビューを実施する予定だが、現在までの結果では、「性被害者のトラウマ反応についての理解が支援を円滑にする」「業務分担や専門性を明確に伝える」等、性被害者の支援を円滑にする要因が複数抽出されている。 「円滑な連携と精神的支援技術向上のための専門職研修の教材作成」では、上述の研究結果をもとに、被害者や支援者が読んでも分かりやすい、トラウマ焦点化認知行動療法の紹介パンフレットを作成、関係機関に配布した。 【意義】性被害後のPTSD発症率は高く、適切な治療への導入が喫緊の課題である。従来、トラウマ体験後の心理教育が重視されてきたが、研究の結果から、トラウマ体験をする以前に心理教育を実施することが重要だとわかった。今回作成したトラウマ焦点化認知行動療法紹介パンフレットの意義は大きく、支援機関連携においても役立つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度に研究を終了する予定であったが、性被害者支援に関わった経験を一定以上有する専門職へのインタビュー調査が終了せず、研究を延長したため、遅れていると考えられる。 インタビュー調査については、平成26年度から性犯罪の罰則に関する法改正の動きが始まり、法律上の「強姦」「強制わいせつ」等性犯罪の定義が変わる、あるいは性犯罪が非親告罪になる可能性があったため、性犯罪被害者の支援に及ぼす影響も強いと判断し、インタビュー開始時期を会議の方向性が定まった平成27年度秋以降に変更してデータを収集した。インタビューでは、特に刑事手続支援において、法改正の影響が考えられることが語られ、インタビュー開始時期を一律遅らせたことは、意義あることであったと考えられる。また、平成26年度に分析した本研究の結果についてもインタビュー内容に取り入れることが可能となり、性被害者の援助希求行動や適切な精神的支援への紹介についても貴重な知見を得ることができた。しかし、結果、インタビュー調査が終了せず、研究の延長に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、支援者へのインタビューを終了させ、データを質的に分析し、性被害者支援における有効な機関連携の在り方を明らかにする。第二に、未発表の調査データについて、論文投稿および学会発表をし、研究結果を広く専門職に公表する。第三に、研究成果をまとめた冊子を作成し、被害者支援研修に生かせるようにする。これらを平成28年度に行う。
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Causes of Carryover |
第一に、平成27年度中に終了予定であったインタビュー調査について、実施が遅れ、インタビュー協力者への謝金およびテープ起こし費用、質的分析への助言謝金等を平成27年度に使用せず、次年度使用額が生じたためである。第二に、平成27年度中に英語論文執筆の校正費用を使用予定であったが、上記調査の遅れに伴い、その使用が遅れたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、インタビュー協力者への謝金、テープ起こし費用、質的分析への助言謝金、英語論文校正費用、国内学会での研究成果発表のための交通費として、研究費を使用する。
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Research Products
(4 results)