2013 Fiscal Year Research-status Report
人生の最期に向かう沖縄戦体験者との「見える物語綴り法」の共創に関する探索的研究
Project/Area Number |
25780437
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Okinawa University |
Principal Investigator |
吉川 麻衣子 沖縄大学, 人文学部, 講師 (80612796)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 戦争体験者 / 沖縄 / 沖縄戦 / 物語 / 共創 / レジリエンス / ライフヒストリー / 見える物語綴り法 |
Research Abstract |
本研究は、人生の最期を迎えようとしている沖縄戦体験者の自発的な語りを主軸として、「見える形で」自分史を整理できる方法(映像や写真,絵を用いた方法)を開発し,その効用について検討することが目的である。2013年度は、戦争体験を「語ることの意味」の概念的探索と、「語ることの意味」と関連要因との検討および体験者のニーズを把握するために、下記の3点について研究を進めた。 まず、文献研究では、1997年から収集を開始した沖縄戦体験者に関する文献・資料(書籍5冊,学術論文12稿,体験手記25冊,新聞記事145件)の中から、412の記述を抜粋する作業を行った。その結果、「沖縄社会からの平和の発信(歴史・社会的意義)」、「自己語りの一側面(個人的意義)」、「後世に伝える役目、語り残さねばならない(世代間伝承)」が主な要素になることが示唆された。 次に、2005年より沖縄県内7地域で実施している「戦争体験を語らう会」参加者77名の記録のうち、会に参加するまで沖縄戦での体験を語ったことがなく、会に参加するにつれて次第に感懐を語るようになっていった7名の語りデータを再分析した。その結果、「語ることへの怖さ(記憶の再現、情緒不安定、受け止めてもらえなさ)」は語り続けるにつれて低減していくとは限らず、「怖さ」は常にある。それでも語りを続けるのは、「死ぬ前に自分の人生を整理したい(意味を持たせたい)」という一連の心的作業の一部であることが示唆された。 さらに、上述の「戦争体験を語らう会」参加者77名に対し、「戦争体験を語ること」、「沖縄の精神文化」、「レジリエンス」に関する質問紙調査を実施した。調査の中で、体験者のニーズを聴き取りも行い、50名より「見える物語綴り」の実施希望があった。質問紙調査は年度内にデータ収集は終了し、現在結果の分析を行っている。2014年度に成果報告を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度に実施する計画であった「サブテーマ①-1:戦争体験を語ることの意味の概念的探索」は、研究期間以前に資料収集をほぼ終えていたため、順調に進み完了した。「サブテーマ①-2:戦争体験を語らう会参加者のデータ再分析」も、研究参加者の協力が十分得られたため、順調に進み、当事者へのフィードバックも終えた。次の段階である「サブテーマ②:語ることの意味と関連要因との検討およびニーズ把握」については、おおむね順調に進展した。研究参加者とその家族および地域の協力が十分に得られたためである。しかし、2013年度のうちに質問紙調査の結果分析を完了する計画であったが、その作業を遂行することができなかった。なぜなら、2014年度に実施する計画であった「サブテーマ③:見える物語綴り法の共創(実践)」を前倒しして実施しなければならない事情が生じた。実践希望者の中に、病気のため次年度での実施が難しい方がおり、質問紙調査の結果分析よりも実践を優先して行った。このことは、研究遂行により予想される問題点として考えていた想定の範囲内ではあり、実践希望者のタイミングで開始・終了できるようにすることを本研究の実践的意義として重視しているからである。 また、2013年度に、研究成果発信のためのWebページを作成することができなかった。その理由は、2014年度に参加を予定している海外学会の参加費および渡航費を2013年度に支払わなければならなかったため、予算の都合上、Webの作成は2014年度に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
・「サブテーマ②:語ることの意味と関連要因との検討およびニーズ把握」は、早々に結果分析を終え、2014年度に心理学関連学会で成果報告を行う。そのための準備はすでに始めている。 ・研究成果発信のためのWebページの作成を始められるよう業者を選定中である。2014年度予算内で遂行できるようにする。 ・2014年度に実施を計画している「サブテーマ③:見える物語綴り法の共創(実践)」は、本研究のメインテーマである。実施希望者の状況により試験的に2013年度に実施した1名に要した時間を鑑みても、研究参加者の個々のニーズに応え方法論を確立していく過程は、予想以上の時間を要することが考えられる。研究実施者の実践の整理のためにも、スーパーバイザーの研究上の学術的助言指導を受けながら遂行していきたい。
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Research Products
(1 results)