2015 Fiscal Year Research-status Report
在宅療養支援機関におけるグリーフケアの促進に関する研究
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25780440
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
中里 和弘 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90644568)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 死別 / 遺族 / 在宅 / グリーフケア / 訪問看護事業所 / 遺族訪問 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、遺族訪問の実態把握及び終末期の要因と遺族の適応との関連性を検討することを目的とした。訪問看護事業所74 箇所を対象に、過去1 年半の間で遺族訪問をした事例に関する質問紙調査を実施し、38 事業所から計102 事例の回答を得た。 遺族訪問の実態では、1)全利用者の遺族を対象とする事業所が7 割、集金を兼ねる事業所が5割であった。7 割の事例が1か月以内の訪問であり、滞在時間は30 分又は60 分に2 極化していた。3)遺族訪問時に2 割の遺族が何らかの精神面で問題を抱えている可能性が推測され、2 割の遺族を他機関に繋げていた。4)8 割の事例で、スタッフは訪問時に傾聴・受容、介護の労をねぎらう言葉かけを意識して行っていた。それ以外の対応を意識して行った事例は5 割であった。5)9 割以上の事例で、訪問するスタッフ側のメリット(提供したケア評価、訪問当時の家族の思い知る機会になる等)が意識されていた。6)スタッフは、訪問が遺族の悲嘆軽減や前向きな気持ちの生起に「多少は役になった」と思いながら実践している心情が伺えた。 終末期の要因と遺族の適応との関連性では、1)2 割の遺族で終末期に生前の看取り期に死にゆくプロセスを適切に受容できていなかったと評価された。2)ケアに本人・家族の意思を反映できたとする割合は高かったものの、本人の意思の方がケアに反映できたとする割合は低かった。3)スタッフから見て、家族の意思をケアに反映できたと評価した事例の方が、家族は利用者の死にゆくプロセスや死を受容し、遺族訪問時の適応も良好であったと評価された。本人の意思の反映を尊重しつつ、家族の意思を上手に反映することが看取り期の家族の心の準備を促し、死別後の適応に繋がると思われた。 多施設の事例データを分析することで、事業所の体制や姿勢だけでは把握困難な遺族訪問の実態、遺族の適応に繋がる終末期の要因の焦点化に寄与する資料を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に実施した調査研究から、遺族訪問が遺族支援の要であること、スタッフは終末期の要因が遺族の適応に影響することを意識して終末期ケアを実践している可能性が示唆された。しかしながら、多施設を対象に遺族訪問の実践を検討した報告は極めて少ない。また在宅看取りにおける終末期の要因と遺族の適応との関連性を検討した研究知見の蓄積が求められる。本年度はこれらの課題に対して、ケア提供者の視点から遺族訪問をした103事例をデータに検討を試みた。多施設の事例データを分析することで、事業所の体制や姿勢だけでは把握困難な遺族訪問の実態(遺族訪問の構造、訪問時の対応、評価等)、遺族の適応に繋がる終末期の要因の焦点化に寄与する資料を得ることができたことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
調査結果を整理した報告書を作成し、在宅看取り対応している関東の全訪問看護事業所に報告書を送付し、臨床的還元を図る。遺族支援に関する具体的な資料を提示することは、1)すでに遺族支援を実施している事業所に対して遺族支援の振り返り、2)今後、積極的な看取りケアを検討している事業所に対して支援を実施する上での具体的な資料に繋がると考える。
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Causes of Carryover |
在宅で看取る家族へのケアの視点としては、1)死別後の悲嘆の軽減に繋がる家族ケア(死別前の対応)、2)不適応な状態にある遺族に必要なサービスを繋げる対応(死別後の対応)の2 つが連動することが重要と考える。ケアは提供する側と受ける側の両輪がうまくかみ合ってはじめて意味をなす。在宅のグリーフケアの研究知見が不足している現状では、まずはケア提供者側の視点から後ろ向き研究を実施することは、遺族に対してグリーフケアの評価を求める際に検討すべき必要最低限の内容を精査する上で不可欠な視点となる。本年度は十分な議論を重ねた上で調査を実施し、得られたデータの分析に重点を置くことで、前年度の調査結果を発展させたグリーフケアの促進に寄与する資料を得ることができた。次年度に、これまで実施した調査結果を整理した報告書を作成し、訪問看護事業所に送付することから、次年度使用金額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査結果の報告書の作成及び送付費用(報告書作成費・印刷費用・発送作業費・発送費等)で使用する。
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Research Products
(4 results)