2014 Fiscal Year Research-status Report
注意欠陥多動障害における認知機能の解析:動物モデルによる検討
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25780443
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
末永 叔子 東京福祉大学, 心理学部, 講師 (80431667)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 注意欠陥多動障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では注意欠陥多動障害(ADHD)モデルマウスの認知機能や脳神経の形態的特徴を明らかにすることを目的とする。平成25年度にはモデルマウスの認知機能の特徴を検討し、運動衝動性の増加と注意障害がみられることを明らかにした。一方、認知衝動性や空間学習機能には野生型マウスと差がなかった。ADHDの症状には様々なサブタイプが存在すると考えられているが、本研究で用いたマウスでは特に上記症状を特徴とするADHD者のもつ神経形態的特徴が解明される可能性が示唆された。以降の研究ではモデルマウスの脳神経形態にどのような特徴が見られるかを検討する。対象部位は、移所行動の調整に関わる側坐核、運動調整に関わる線条体、認知機能課題の遂行に関わる前頭前野とした。 平成26年度には、側坐核と線条体の神経形態を分析した。いずれの脳部位においても樹状突起長と分岐数、樹状突起棘数およびその形態を分析した。樹状突起棘の形態はその成長段階によって、thin、stubby、mushroomにわけられ、mushroomタイプが成熟段階にあると考えられている。線条体では樹状突起長と分岐数にはモデルマウスと野生型マウスに差は見られなかった。樹状突起棘の数は両群のマウスに差はなかったが、その形態には群間に差が見られ、thinとstubbyの割合は野生型マウスと比較しモデルマウスの割合が多く、mushroomの割合は野生型マウスにおける割合がモデルマウスよりも多かった。側坐核の神経細胞ではいずれの測度でも野生型マウスとモデルマウスの間に差は見られなかった。前頭前野は解析を行うために十分なデータを年度内に収集できなかったため、次年度に解析を行うこととした。本年度の研究結果から、本研究で用いているADHDモデルマウスは線条体の神経発達に異常があり、この異常がADHD様の行動を引き起こしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度にはモデルマウスの脳神経形態の分析を行う予定であった。マウスの脳にゴルジ染色を施し、側坐核、線条体、前頭前野を標的として神経形態の観察を行った。ゴルジ染色は神経の全体を染めることができるが、一部の細胞をランダムに染めるという特徴がある。その特徴をふまえ、細胞の樹状突起全体の形状を正確に観察するため、対象とする細胞が、他の染色された細胞とは離れていること、細胞体と樹状突起の全体が脳切片内に含まれていること、等の条件を設定した。これらの条件をクリアする細胞を見つけることが困難な脳部位があったため、観察および解析に予定以上の時間がかかった。そのため、当初は平成26年度に研究を終了する予定であったが、補助事業期間を延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに蓄積した脳切片画像をもとに、引き続き脳神経の観察を行う。解析項目として、樹状突起長および樹状突起の複雑性、樹状突起棘の数と形態の分類を予定している。
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Causes of Carryover |
平成26年度に終了予定であった脳神経形態の解析を終了することが出来なかった。本研究で用いたゴルジ染色法は、神経の全体(細胞体、樹状突起、樹状突起棘など)を染めるため、全体像の把握に優れる反面、脳切片状にある多くの神経の一部をランダムに染めるという特色を持つ。そのため、神経形態の特色を正確に分析出来るだけのデータを収集することが困難であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き脳神経の解析を行うため、顕微鏡画像の解析ソフトであるNeurolucidaのアップグレードを行う。また、成果発表のための旅費として使用する。
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