2014 Fiscal Year Research-status Report
感情研究におけるベースライン測定の標準プロトコルの開発
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25780448
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Research Institution | Osaka University of Health and Sport Sciences |
Principal Investigator |
手塚 洋介 大阪体育大学, 体育学部, 准教授 (80454578)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感情 / 心臓血管反応 / ベースライン |
Outline of Annual Research Achievements |
感情研究を行う上で,ベースライン(以下,BL)の測定は重要な位置づけとなる。たとえば,感情の心臓血管系精神生理学研究では,課題に対する反応性や回復性などが検討対象となるが,これらはBLとの差分値として分析されるため,BL測定が実験結果に決定的な役割を果たすことになる。しかし,BLをどのように測定すればよいのかという点については,これまでわずかしか研究が行われておらず,ラボことに手探りの状態にあるといえる。先行研究を踏まえると,①生理反応だけでなく主観的感情体験を測定する,②特別な装置がなくとも容易に実施可能な方法を用いる,③先行研究にみられるような積極的な課題遂行ではなく,参加者の自覚なしに自然な形で認知負荷を課す,という3点が,BLの測定法を検討するうえで取り組むべき課題として指摘できる。そこで本研究は,最終的に標準プロトコルの開発を視野に入れ,簡便で信頼性の高いBLの測定法について検討することを目的とした。 具体的な研究課題として,①軽微な認知負荷 (黙読) が主観的体験に及ぼす影響の検討,② BLの最適な測定時間の検討,③これまでに提案されている他の測定法との比較,④黙読が課題遂行時の反応性および課題後の回復性への影響の検討,⑤BL測定の標準プロトコル実施のためのマニュアル作成という5つの課題を設けた。 26年度は,上記の課題のうち③および④に関する実験が完了している。また,①および②については現在実験が進行中である。完了した実験に関して現時点での分析結果からは,黙読における軽微な認知負荷は,先行研究で提案されている手法(ヴァニラベースライン法)に比べて安静時での心臓血管反応の安定をもたらす可能性が示唆されている。また,課題時の反応の亢進も相対的に抑えられる傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の補助事業期間は,25年度から26年度にかけてであったが,25年度に本助成金とは別に学外(文部科学省・私立大学等研究設備等補助金)および学内の助成金を通じて実験室の大幅改修が実施され,継続的に実験が行える状況が確保できず,予定していた実験を完了することができなかった。26年度は,当初予定していた実験準備の都合から,研究課題③(これまでに提案されている他の測定法との比較)および④(黙読が課題遂行時の反応性および課題後の回復性への影響の検討)について先に着手せざるを得ない状況にあり,課題①(黙読が主観的体験に及ぼす影響の検討)と②(BLの最適な測定時間の検討)については実験を完了できなかった。また,25年度の成果発表も26年度に行えなかった。以上より,2年間で全ての研究計画を順調に遂行できなかったが,補助事業期間の延長承認申請を行い,それが承認されたことから,27年度に残り研究課題を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は,研究課題①(黙読が主観的体験に及ぼす影響の検討)および②(BLの最適な測定時間の検討)に関して進行中の実験を完了させ,課題⑤(BL測定の標準プロトコル実施のためのマニュアル作成)に着手する。また,26年度に実施した研究成果を,9月にアメリカで開催されるthe 55th Annual Meeting of the Society for Psychophysiological Research (SPR)にて発表予定である(発表要旨は採択済みである)。
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Causes of Carryover |
25年度に予定通り研究計画を履行できなかったことで,26年度の実施内容にも影響が生じるとともに,2年分の計画を全て完了することができなかった。そのため,5つの研究課題に関する実験にかかる費用と,25年度の成果発表を26年度に国際学会にて発表するための旅費を適切に執行することができず,次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験環境は概ね整備されており,物品費の執行予定は今のところない。執行予定の項目として,26年度の成果発表を行うために参加するthe 55th Annual Meeting of the Society for Psychophysiological Research (SPR)の旅費,未完了の実験にかかわる人件費・謝金,および国内外の学会参加に関する費用(その他)として使用を予定している。
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