2015 Fiscal Year Annual Research Report
熟練社会教育職員のライフコースと力量形成に関する研究
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25780462
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
松本 大 弘前大学, 教育学部, 講師 (50550175)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会教育職員 / ライフストーリー / 専門性 / 成人教育 / 成人学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、熟練社会教育職員の専門性やその形成過程とはいかなるものかを、個人のライフコースに沿って明らかにするということである。 最終年度である本年度は、先行研究の理論的検討や前年度までのインタビュー調査をふまえ研究論文「社会教育職員として生きる―ある社会教育主事のライフストーリー―」を執筆した。先行研究の検討においては、従来の研究が社会教育職員の身分や専門性の保障が重要な課題となっているという時代的背景のもとで、社会教育の専門職としての制度的基盤や、力量を形成するための研修や養成のあり方について手厚く検討をおこなってきた一方で、そうした制度のもとで労働し生活している社会教育職員個人それ自身を分析した研究が少ないことを明らかにしてきた。さらに、このような職員個人を分析するためには、個別の労働の場において、社会教育の専門的実践が時間的・重層的にいかに構築されるのかを描くことが重要であり、この意味においてライフストーリーという分析視角が有効であることを提起した。さらに社会教育労働とは、日常の労働のなかで構成される矛盾に向き合いやりくりをしていく弁証法的な過程として描くことが可能であり、このときの主体の形成や抵抗の戦略のなかに社会教育職員としての力量形成の鍵を探究していくことの重要性を論じた。 以上の理論的枠組みのもとでインタビューデータを分析した結果、社会教育労働で生じる「挫折」は複数の実践コミュニティを越境するなかで社会教育の意味が再構築されることで解消がみられること、また社会教育職員の力量形成に作用する実践コミュニティとは、職場や地域コミュニティだけではなく、制度やディシプリン、さらには自分やコミュニティの「未来」も、力量や挫折に関係していたことを明らかにすることができた。
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