2015 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半郷学における共通教養教育の構想の変容過程に関する研究
Project/Area Number |
25780463
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
森田 智幸 山形大学, 大学院教育実践研究科, 准教授 (70634236)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 郷学 / 公教育 / 教養教育 / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、明治初期神奈川県域における郷学を対象として、その構想を具体的に分析した。明らかになったことは、以下の通りである。 明治初期神奈川県域においては,複数の郷学構想が併存する状況にあった。一方では,神奈川県による人材登用を目的とした郷学構想があり,また,他方では,地域秩序の刷新や地方行政の円滑化という目的の下,地域における共通教養の学びの場としての構想があった。 人材登用という目的を背景とした神奈川県の郷学構想は,地域の教育機関を基礎教育機関としての役割に限定し,そこでの学習を個別化する特徴をもっていた。神奈川県の構想した郷学は,夜寝る前にも暗誦することが求められるなど,暗誦という方法が徹底され,個別に学習する場として構想されていた。また,その後の学習の機会は,地域ではなく,横浜や東京に設置され,能力ある者に限定されていた。 一方,各地域では,共通教養の学びの場として郷学を構想し,地域の学習の高度化が主題として浮上した。その構想は,入門期の学習の変革をも含むものであり,入門期以後の学習機会を地域につくりだすだけの構想ではなかった。小野郷学では,「解読」の課程に円滑に移行するために「句読科」のカリキュラムの改善も行った。日野宿郷学では,手習所の師匠にも郷学の講釈への出席を求め,地域の学習全体の高度化を図った。 地域の学習の高度化を推進するために着目されたのは学習の協同性であった。小野郷学では「解読科」が「正学」として設定され,よりよく学ぶために「解読」時の作法も定められた。「解読」に際しては,「富貴貴賎」を論じることなく,意見を議論しあうことで「知識の増長」が目指された。
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Research Products
(2 results)