2013 Fiscal Year Research-status Report
デモクラシーによる「公衆」の形成─アメリカ学校改革論の社会思想史的研究─
Project/Area Number |
25780468
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
生澤 繁樹 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (70460623)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | デューイ / 学校改革 / デモクラシー / 公衆 / 社会思想 / 進歩主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は,20世紀転換期から現代にいたるアメリカ学校改革論の展開とその今日的な意義および課題について,社会思想史的な背景に照らし解明しようとするものである。なかでも本研究は,アメリカ革新主義や進歩主義におけるデモクラシー論とそれに基づく「公衆」の形成をめぐる思想史的展開に着目することから,この目的を遂行した。 まず本研究実施計画の初年度にあたる平成25年度は,文献調査を中心的な方法として,ジョン・デューイの学校改革論やデモクラシーの思想を中心に,デモクラシーによる「公衆」形成の意義と課題の所在について解明する作業に着手した。具体的に進めたことは,大きく述べて三点ある。第一は,R. B. WestbrookやA. Ryanなど,社会・政治思想史の分野の諸研究を手がかりに検討を深めた前年度の研究成果を発展的に引き継ぎながら,デューイの「公衆」論についての歴史的・同時代的な研究を行ないつつ,課題解明のための全体的な見通しを手に入れ,問題の所在を確認する作業を開始したことである。第二は,思想史家B. Kuklickが指摘するような世紀転換期における社会倫理や政治倫理に関する関心の歴史的生起をジョン・デューイの政治・教育・倫理思想に引きつけ,その思想形成を社会的関連のなかで読みなおす作業を進めたことである。第三は,アメリカ学校改革論の展開を探る基礎作業として,進歩主義の教育思想の展開を読みなおしながら,進歩主義をめぐる光と影との関連のなかでデューイの「学校と社会」の思想を再考する作業を進めたことである。 これらの研究を進めるために,シカゴ大学,イリノイ大学等を訪問し,海外関連資料の収集と分析を行なうとともに,初年度の成果を一部論考としてまとめるなど,次年度の研究計画をいっそう進めるための準備を整えていった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が中心的に取り組むべき課題にとどまらず,それに関連した周辺的・発展的な問題についても検討を深め,報告・原稿をまとめる機会を得ることもできたため,課題を多角的に捉えなおすことが可能となった。本研究の目的は初年度ということもあり,論文や研究報告といった成果に即座になかなか直結しにくい点もみられるが,おおむね順調に遂行され進展しているものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を大きく変更する必要はない。 研究の成果については,各種研究会の開催・参加,学外研究者との研究交流を通じてさらに成果を検証していく必要がある。次年度は計画以上の進展をめざすため,関連学会などでの研究報告や論文化を積極的に進めていくつもりである。すでにそうした機会もいくらか得られる見込みがあるため,課題解明に向かって具体的な研究遂行といっそうの準備をはかっていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入を計画していたアメリカ学校改革論・デューイ思想,英米社会思想史に関連する図書・洋書の一部に次年度以降刊行のものが含まれていたため,また資料整理等にかかる人件費・謝金の支出を控えたため,次年度使用額が生じることとなった。くわえて国内旅費・海外渡航にかかる費用が当初の見込みよりも大きくなったため,次年度の渡航計画にかかる費用の見直しと,少額ではあるがそれに一部充当することも含めて次年度使用額として年度を繰り越して使用することとした。 次年度使用額については,翌年度請求した助成金と含めて引きつづき研究課題関連図書・洋書等の物品費購入,および海外・国内旅費の一部として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)