2014 Fiscal Year Research-status Report
デモクラシーによる「公衆」の形成─アメリカ学校改革論の社会思想史的研究─
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25780468
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
生澤 繁樹 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (70460623)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | デューイ / 学校改革 / デモクラシー / 公衆 / 社会思想 / 進歩主義 / 革新主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,20世紀転換期から現代にいたるアメリカ学校改革論の展開とその今日的な意義および課題について,社会思想史的な背景に照らし解明しようとするものである。本研究では,前年度に引きつづき,アメリカ革新主義期におけるデモクラシー論とそれに基づく「公衆」形成の思想史的展開に着目することから,この目的を遂行しようと試みた。 研究計画2年目にあたる平成26年度は,昨年度解明された研究成果を基盤としながら,具体的には次のような検討を加えていった。主として二点に整理できる。 第一に,デモクラシーに基づく民主的な教育論やデモクラティックな公衆の形成に関する現代の社会思想史,教育思想史,政治思想史分野の学術的動向を踏まえつつ,デューイとその周辺思想にまで射程を広げて歴史的に考察する作業を進めていった。とりわけ,革新主義の時代からリベラル・ジャーナリズムの展開をめぐる時代的状況を中心に,社会的関連の複雑さが高まるなかでデモクラシーが「公衆」を形成するという問題がどのように議論されていたかを考察し,さらにはデモクラシーの「拡張」と「抑制」というこの時代の論争的側面から,「公共的知識人」として活動したデューイのテクストと行動を手がかりに,デモクラシーを教育する「教師」をめぐる公衆/専門家としての二重の役割について思想史的検討を行なった。 第二に,学校におけるデモクラシーの教育の基礎的条件の変容を踏まえて,デモクラシーの社会と学校改革とをめぐる現代的課題についても発展的に探っていった。なかでもデューイの民主的教育論にみられるデモクラシーの「意図」と「付随」,「制度」と「非制度」の問題について考察し,「媒介された経験」という視点の今日的評価を試みた。また道徳教育,シティズンシップ教育,学校変革へと連動する現代の民主的な学校改革論の可能性とその課題についても批判的に吟味し,解明する作業を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のなかで当初予定していた研究計画は着実に進められ,研究発表や論文というかたちで成果も公表できている。また本研究の課題遂行のなかからさらに検討され解明されるべき周辺的かつ発展的な問題もより明らかになり,それらの考察すべき問題についても研究の視野に収めることが可能となっているといえる。こうした研究成果の一端は,シンポジウムやフォーラムなどの学会活動を通して広く報告,発信することもできた。以上のことから本研究の目的は,おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題解明のための計画を推進していくにあたっては,各種の関連学会や研究会への参加,学外の研究者・学校教員との学術的な交流のための機会をさらに積極的に増やすなど,これまでどおり研究成果を広く検証するようにしていきたい。また,論文や学会報告などを通じて,研究課題の解明を計画以上に進展させていくつもりである。
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Causes of Carryover |
研究報告および論文執筆に専念するために一部海外・国内旅費等の支出計画を見なおした。また人件費・謝金やその他印刷費の費用を必要とする資料整理等の支出計画を見なおした。そのため,一部,次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度の補助金とあわせて,旅費等の計画を中心的に見なおし使用する。
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Research Products
(10 results)