2014 Fiscal Year Research-status Report
「学校力」を開発するキャパシティ・ビルディングに基づく学校改善の研究
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25780470
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
黒田 友紀 日本大学, 理工学部, 准教授 (60631851)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学校改善 / キャパシティ・ビルディング / 授業改善 / 学校文化 / 教員政策 / アカウンタビリティ / 米国 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
「学校力」を開発するキャパシティ・ビルディングに基づく学校改革の実態の解明のために、まずは、支援チームによる学校改善の取り組みを中心に文献調査とその分析を行った。とくに、1994年の「米国学校改善法(Improving America's School Act)」における支援チームによる学校改善に関する規定と、それ以後の各州の学校改善の動向、そして現在の改革について検討を行った。この成果は、日本教育学会第73回大会において報告した。また、現オバマ政権下における学校改善のなかの、学校改善のための教員政策に焦点をあてて、「オバマ政権における教員政策の実態と課題 : マサチューセッツ州を事例として」(『教育制度学研究』21号 pp. 194-199)と、「米国のスタンダードにもとづく教員養成プログラムとその運用について―パフォーマンス評価の展開と課題―」(『日本教育大学協会研究年報』33号 pp. 1-12)にまとめて発表した。 オバマ政権下における学校改善の実態については、3月にマサチューセッツ州・ボストン市を訪問し、調査を行った。具体的には、マサチューセッツ州の学校改善の実態を検討するために、州教育局の学校改善のための支援スタッフへのインタビュー調査と、図書館での資料収集を行った。次に、学校改善の実際を検討するために、ボストン市のイノベーション・スクールであるハイスクールにおける学校改革や学校としての専門性の開発についての聞き取り調査と校内研修への参観を行った。 米国での学校改善を分析するためにも、競争から協働へと重心を移しているカナダ・アルバータ州の学校改善についての文献調査および訪問調査を行った。また、昨年度に引き続き、日本における「学校力」を開発する授業・学校改革に取り組んでいる学校の校内研修に参加し、日本における学校改革についても検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、学校改善の取り組みに関する文献調査を進めつつ、実態の解明のための調査を行った。おおむね順調に進展したとは言えるものの、体調不良などの個人的な事情で、予定した9月の米国調査を直前にキャンセルすることになり、その代わりに3月に米国での実態調査を実施するなど、計画の細かな変更を余儀なくされた。 文献調査については、90年代以降の学校改善の研究、とくに、1994年の「米国学校改善法(Improving America’s School Act)」において規定された、「支援チームによる学校改善」に焦点をあてて、各州の学校改善の取り組みの研究などから分析を行った。その他、引き続き、オバマ政権下での学校改善に関する資料収集を行っている。 学校改善に関する実態調査については、米国・マサチューセッツ市とカナダ・アルバータ州を訪問して、資料収集およびインタビュー調査を実施した。昨年度から情報収集を行い、基本情報を取得していたため、その実態について調査した。マサチューセッツ州教育局の学校改善支援について、学校改善スタッフの職務や支援の具体について聞き取りを行った。また、校内研修があまり盛んではない米国において、ボストン市のあるハイスクールでは、校内研修や教師の専門性の開発に学校全体で取り組んでいる実態について、校長への聞き取り調査と校内研修への参観を行った。米国の改革を相対的に評価するためにも、カナダにおける学校改革についての情報収集を行った。テスト成績の向上とアカウンタビリティを強く打ち出す米国と比べ、カナダは、競争から協働へと重心が移動していることが今回の調査から明らかになった。 研究の成果として、平成25年度の研究成果などから、現在のオバマ政権下における学校改善のための教員政策の実態と課題についての論考と、教員養成プログラムとその運用についての論文をまとめ、学会誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、研究の最終年度となるため、これまでの文献調査の分析とまとめを行う。とくに、分散的リーダーシップ論をモデルとした、エルモア(Elmore Richard)の「reciprocity of accountability for capacity」などの理論から、教育行政専門職と学校・教職員の、学習と能力を時計的に交換し合うなかで学校改善をめざす新しいシステム構築について検討したい。さらに、競争よりも協働を重視するハーグリーブズ(Andy Hargreaves)&フーラン(Michael Fullan)らが主張する「professional capital」や、学校の自律性を保障しながら学校改善を行う理論と方法について検討を行う。 また、引き続き、現オバマ政権において展開されている、学校の力を高め強化する学校改善や教員政策・研修についての資料の収集および分析を進める予定である。 学校改善の実態の解明については、再度マサチューセッツ州を訪問し、追加的調査を行う予定である。米国の学校改善を相対的に捉えるために、カナダや日本で行われている学校改善についても調査と検討を行いたい。 これらの、学校改善の展開については、教育系全国学会で研究成果を発表する。そして、論文としてまとめて学会誌へ投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究代表者の体調不良により、当初9月に実施予定であった米国での調査を直前でキャンセルを余儀なくされ、3月に米国およびカナダでの調査を再計画して実施したが、想定よりも旅費・交通費の支出が少なかったこと、加えて、10月の教育関係の学会の参加と、2月の研究会の実施が困難となったことにより、旅費および謝金などを支払いが減り、想定よりも支出額が少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本年度計画どおり進まなかった米国での調査を再度計画して実施する予定である。その他、学会(日本教師教育学会、日本教育方法学会など)での成果の報告、国内での資料収集、日本の学校力を高めるための学校改革の調査などを行うために支出予定である。
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