2013 Fiscal Year Research-status Report
米国教員養成政策の形成過程-オルタナティブ・ルート政策の「選択」に着目して-
Project/Area Number |
25780481
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
小野瀬 善行 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (50457735)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 教員養成 / 教員資格認定 / alternative route |
Research Abstract |
初年度は、ARTCがなぜ「選択」されたのかを明らかにするため、教員養成政策研究への政策形成過程研究の理論的枠組みの適用可能性を考察し、事例州の考察を開始することを計画していた。 まず、政治学など隣接の社会科学領域の先行研究をひろく渉猟することに努めた。しかし、特に国外の先行研究に関する分析が十分に行えず来年度以降も理論的枠組みの構築について継続することとした。 次に、政策過程分析の一端として、本年度は、1998年にアメリカ合衆国連邦議会におけるHEA(1998 Amendments to the Higher Education Act of 1965 P.L. 105-244)改正に着目した。同法は各州に教員候補者のための養成プログラムの改善、現職教員の資格認定の徹底を求めながら、同時にARTCを奨励する内容であった。そのため各州や教員養成プログラムに関連する機関や団体はARTCプログラムに対する基本的な姿勢がより明確に問われ、どのような政策を「選択」するのかについて各州の事例分析を目ざす本研究の実施にも有益な資料となると考えた。具体的には、アメリカ教員養成大学協会(the American Association of Colleges for Teacher Education)、教師教育者協会(the Association of Teacher Association)が、ARTCプログラムの教員不足に対する貢献を一定程度認めた上で、教員の能力や生徒の成績に与える影響(effectiveness)を測定する評価制度の構築を強く求めていることを明らかにした。 しかしながら、本年度は、計画ではニュージャージー州などの調査を行う予定であったが、訪問調査の計画や事前のアポイントメントが不調に終わったため、各州調査について着手することができず、次年度以降に持ち越しとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先述の通り、まず理論的枠組みを構築する面において国外研究の分析が研究計画に比して十分に行えなかった点が挙げられる。次年度以降は、研究計画に則り、国内外の先行研究について分析を進めていきたい。 また、連邦政府レベルの政策過程について一定程度分析を進めることができたと考えるが、具体的に各州の分析を行うことが叶わなかった。連邦政府レベルの政策を追うことに時間を取られ、教員養成および教員資格認定制度全体においてARTCをどのように位置づけるのかについて評価するのに予想以上に時間が取られてしまったことが、その理由のひとつである。さらに、本研究申請時に訪問を予定していた部課局の再編などもあり、その再調整に時間が取られたことも理由として挙げられる。 上記の反省を踏まえながら、次年度以降、研究計画と照らし合わせながら、アメリカ合衆国における教員養成制度政策の形成過程について明らかにしていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる平成26年度では、初年度に引き続き政策過程研究の「理論的枠組み」を精査し、本研究への適用可能性を考察する。 また、アメリカ合衆国への訪問調査を行う。事例州の中でもARTC 政策の「安定」度の高い、テキサス州、カリフォルニア州における調査を重点的に実施する。各州都において、議会関連資料の収集に努めるとともに、州レベルの政策形成過程において措定されるアクターへの聞き取りを行う。特に、ロサンゼルス(カリフォルニア州)、ダラス、ヒューストン(以上テキサス州)といった全米屈指の大都市部を抱える学校区(あるいはその近郊の学校区)におけるARTC プログラムを対象として、ARTC 政策が「選択」された際、従来までの教員養成におけるアクター(州、学校区、高等教育機関等)の連携・協力関係がどのように変化したのか、その帰結としてどのようなことが惹起したのかについて分析するため、資料収集や聞き取り調査を行う。 とりわけロサンゼルスは、評価の高いARTC プログラムが存在している(Darling-Hammond 2010)。初年度と同様に、大都市部(あるいはその近郊)を対象とすることで、従来までの教員養成プログラムに関するリソース(例えば高等教育機関等)が多く存在しているはずの中で,何故、新たなリソースが必要となるARTC 政策が「選択」され「安定」したのか、そして従来までのリソースにどのような帰結をもたらしたのかについて分析を進めることで、本研究の目的を効果的に達成することができると考える。 また、初年度と同様に、研究代表者(応募者)が所属する関連学会大会において、本研究の研究経過とその時点での成果を報告する。その際、他の研究者と有意義な交流を図ることで、本研究を具体的かつ効果的に進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に計画していたアメリカ合衆国への訪問調査を延期したため、次年度使用額が生じた。 今年度、アメリカ合衆国への訪問調査を、当初の予定の1回から2回に変更することで、滞りなく予算を執行できるものと考える。具体的には、事例州の中でもARTC 政策の「安定」度の高い、テキサス州、カリフォルニア州における調査をそれぞれ行う。当初の計画においても本年度は同州への調査を行うこととしていたが、別日程で行うことにより、各州都における議会関連資料の収集の充実を図り、従来までの教員養成プログラムに関するリソース(例えば高等教育機関等)が多く存在しているはずの中で、何故、新たなリソースが必要となるARTC 政策が「選択」され「安定」したのか、そして従来までのリソースにどのような帰結をもたらしたのかについて分析を進めることで、本研究の目的を効果的に達成することができると考える。
|
Research Products
(1 results)