2015 Fiscal Year Research-status Report
米国教員養成政策の形成過程-オルタナティブ・ルート政策の「選択」に着目して-
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25780481
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
小野瀬 善行 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (50457735)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 / 政策過程 / 教員資格認定制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アメリカ合衆国(以下アメリカ)における1980年代の教育学専攻(major)の廃止に関する議論を手がかりとして、教員資格認定のためのオルタナティブ・ルート(alternative route to teacher Certification、以下ARTC)の導入に関する政策について分析を行った。具体的には、1987年にテキサス州議会において審議された994号法案(Sanate Bill 994)を事例として、その成立過程を明らかにした。同法案では、教員志望者は一般科目(academic major)を専攻することが義務づけられ、教員資格認定に必要な学士課程段階での単位を制限することで、学士課程における教育学に関する専攻が廃止されたものである。なぜ、このような法案が提起され、可決に至ったのか。理由を明らかにすることにより、ARTC政策が選択された理由を探ろうとした。 同法案を分析したことで明らかになったことは、教員資格認定制度改革が単独で行われたわけではなく、高等教育機関に対する州の立法府や行政府の影響力が強まるなかで、州の初等・中等教育の改革と連動する形で高等教育改革がなされたことである。このような改革を背景として、教員資格認定のために学士課程段階で教員になるために何を学ぶかについては、教育学研究の「理論」の自律性、体系性などによって定められるのではなく、初等・中等教育改革の推進に求められる教員の能力が立法府や行政府における議論で決定されたことが994号法案の審議を経て明らかとなった。ARTCの導入は、州の立法や行政という、いわば「外圧」により選択されたといえる。すなわち、教育問題が政治的課題とされる時代において、教員資格認定制度改革のための政策が選択される過程で教育学の「理論」が正当に評価されていなかったため、ARTCが導入されたことの証左といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
最終年度であったが年度途中に職場の異動があり、まったく新しい環境に順応するための準備などに時間をとり、予定されていた調査などが行えなかった。これらの上記の理由により、研究期間の延長を申請し、認められたところである。来年度(延長が認められた上での最終年度)には、予定していた調査を実施し、研究成果をまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長を申請し、認められたところであるが、当初の予定通り、渡米調査を実施し、資料収集などを行い、それらの分析を踏まえ、研究成果をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
最終年度であったが、年度途中に職場の異動があり、その準備などのために予定していた調査が実施できなかった。その調査実施分がほぼ次年度使用額に相当するものである。現在、研究期間の延長を申請し、その申請が認められたところであることから適切な処理は済ませていると判断している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画に従い、渡米調査を実施し、資料収集などを行うための旅費として、次年度使用額分を使用する計画である。
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Research Products
(1 results)