2014 Fiscal Year Research-status Report
公吏の学習歴―任用史料にみる明治日本の地域エリートの実像
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25780482
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
池田 雅則 兵庫県立大学, 看護学部, 准教授 (60609783)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文官普通試験 / 判任官 / リテラシー / 中等教育 / 官吏 / サブエリート |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は史料調査、先行研究の解読、学会における成果発表および論文執筆を行った。 史料調査については、群馬県および埼玉県の調査に着手した。また試験実施の実態を調査した。群馬県における調査では、1500名程度の学習歴の収集を行った。また試験問題の解答用紙を収集することができた。加えて、人事関連例規を収集することができた。埼玉県における調査では、普通試験受験者の学習歴、詮衡任用関連文書、職員向け講習の文書などの収集を行った。試験実施の実態調査については、『官報』広報欄の調査を進めた。 先行研究の解読については、行政史、政治史および教育史の関連書籍を収集して解読を進めた。解読の結果、先行研究ではサブエリートの学習歴を明らかにする研究が実態史に限らず制度史においても非常に立ち後れていることが判明した。それゆえサブエリートの学習歴を明らかにする前提となる、戦前期の公務員制度および試験制度を整理する作業をも研究代表者自ら行う必要性があるという課題が露呈した。 学会における成果発表については、2件の招待講演を行った。日本教育史研究会における報告では、サブエリートの「学び」がノンフォーマル・インフォーマルな機会において果たされていた事実を詳細に明らかにした。その上で「学び」の研究を主題化することは、学校教育に重心をおいた教育史研究を生涯学習に重心をおいた教育史研究に逆転させることにつながりうることを提起した。比較教育社会史研究会における報告では、官公立学校と私立学校との比較という観点から近代におけるサブエリートの学習過程や資格取得の特徴を捉える方法論について比較史的に論じる意義について提起した。 論文執筆については、先行研究の解読の結果、課題として必要となった戦前期の公務員制度および試験制度を明らかにする研究、および戦前期の公務員の量的規模を統計書類から明らかにする研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料調査については、順調に推移し、現在のところ2000名以上の学習歴を収集することができている。 先行研究の調査については、現状の課題を明らかにして研究進展に活かすことができている。 成果発表については、順調に報告を行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した史料に基づいて、それぞれの学習歴、職歴のデータベース化に着手したい。また『官報』から抽出した普通試験実施記録をデータベース化し、官吏任用における試験の比重の置かれかたについて検討を進めたい。 試験実施記録や公文書館に所蔵された人事例規は基礎的で重要な史料なので、とりまとめた形で公開を検討したい。 また新たに、雑誌メディア等を用いて当時のサブエリート観について明らかにする作業に着手したい。 そして、とりまとめられた成果について、順次発表を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
史料調査が円滑に進行したために、旅費額が圧縮された。 画像ファイルを圧縮して保存することができたため、ハードディスクやUSBメディアなどの記録媒体にかかわる経費が圧縮された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
史料の整理に基づいて、学会等で成果を報告する機会が増えることが想定されるため、旅費に多くを充てたい。 また、史料調査の結果、学界に広く共有すべき記録が発見された。翻刻したり目録化した史料を製本し、中間報告書等のかたちで頒布するための費用に充てたい。
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