2014 Fiscal Year Research-status Report
学際的教育研究の可能性と課題:分析哲学の理性と規範に関する知見をベースとして
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25780485
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
三澤 紘一郎 東京福祉大学, 教育学部, 助教 (20636170)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 第二の自然 / 理由の空間 / 社会的動物 / natureとnurture / 理性 / 規範性 / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、「理由の空間」と「第二の自然」という近年の分析哲学の進展の中で注目されている概念が、理性や規範に関する研究の伝統を持つ教育哲学における問題設定や議論にどのような変容をもたらすかを検討することを目指した。その前段階として、ジョン・マクダウェルの解釈する「理由の空間」と「第二の自然」に関する議論の「社会性」と、社会構築主義の「社会性」との対比を行った。この討究により、前者は、人間存在の「社会性」と「自然性」の乖離を防ぎ、第二の自然(社会性-理性)を第一の自然(自然性-動物性)に還元しようとする自然主義とも、第二の自然が第一の自然を凌駕すると考える社会構築主義とも異なる観点から、理性-社会性-規範性をもった自然的存在である人間の説明を可能にすることを明らかにした。 本年度中に関係論文3本を上梓した(1. ‘Animality and Rationality in Human Beings: Towards Enriching Contemporary Educational Studies’, Cosmos and History: The Journal of Natural and Social Philosophy, 10(2), pp. 182-196; 2. ‘On the Benefits and Burdens of the Notion of “Standpoint”’, Philosophy Study, 4(5), pp. 334-344; 3. ‘Nature, Nurture, Second Nature: Broadening the Horizons of the Philosophy of Education’, Educational Philosophy and Theory, 46(5), pp. 499-511.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、おおむね順調に進展している。計画していたテーマの内容で書いた論文が順調に採択され、学会発表の機会を得ることができているため、他者からの批判やフィードバックを多く受けられていることがその大きな要因である。(本年度のテーマに関する詳細な議論は、第50回英国教育哲学会において、‘Rethinking the Meaning of ‘Social’ in Educational Research: On What We Call the World and the Scheme-Content Dualism’として発表した。) また、研究を進める中で、人間存在の社会性という観点から知識や教育に関する研究を行っているキャサリン・エルギン(Catherine Elgin)と本研究について論じる機会を、本年度中に二度得たことによっても、本研究は大きく進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、前年度までの経路を踏まえて、以下の二つのテーマに重点的に取り組む。①マクダウェルの議論(やその教育的側面に着目しているデイヴィド・バクハーストの議論)が、従来の教育哲学の理性や規範に関する議論や問題設定とどのように折り合い、何を新たに付け加え得ているのかについて、より本格的な分析を行うこと;それを基盤として、②寄り合い所帯的で非対話的な「学際性」を超えて、教育研究を理性と規範性という観点からより相互連関性のある学際研究としてくみ上げるための土壌を提供し、学際的教育研究の今後の方向性を示すこと。 研究協力者であるBakhusrt氏とDerry氏と前年度の3月に議論する機会をもち、本研究についての非常に有益な助言を得たので、本年度の前半はそれを発展させながら研究を進める。本年度の半ば(夏)には、特に上記の②のテーマに関して、Judith Suissa氏と集中的に議論を交わす期間を設ける予定である(於UCL-Institute of Education)。本年度の後半は、平成28年3月にモントリオールで行われるPhilosophy of Education Society(米国)の学会において、本年度の研究の総括となるテーマで発表することを目指す。また、その前後にモントリオールから近いキングストンにあるクイーンズ大学のBakhurst氏を訪れ、本研究の今後の課題を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度末に海外出張をしたため、残額で購入することのできる必要物品の検討に十分な時間を割くことができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該残額高を次年度へ回すことによって、必要な物品を購入する補助とする(第一候補として、時間的な余裕があれば、参加することを計画しているAmerican Philosophical Association (Eastern Division Meeting, 米国)の旅費の補助とすることを検討している)。
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Research Products
(5 results)