2014 Fiscal Year Research-status Report
戦前期の「口演童話」活動にみる地域児童文化運動の社会教育的意義について
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25780491
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松山 鮎子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (70608835)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 児童文化 / 貧困 / 子どもの読書環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、第一年度に調査をおこなった松美佐雄の「日本童話連盟」の活動について論文を執筆した(現在審査中)。タイトルは「昭和初期の「校外教育」と「文化」の関係に関する歴史的研究―松美佐雄の教育観と口演童話の実践を事例として―」である。なお、本論文は学会誌へ投稿し、現在審査中である。 本研究においては、昭和初期の口演童話の活動の特徴として、以下の3点が明らかとなった。すなわち、(1)当時、読書などの生活環境に恵まれない多くの子どもたちにとって、口演童話の「お話」を享受することは切実な欲求であったこと、(2)松美の口演童話の理論は、そのような現実の子どもの生活状況から導き出されていたこと、また、(3)その実践が「童話の科学性」を重視し、子どもの成長発達を教育者との相互関係における「文化」の受容、創造によって促そうとしたものだったこと、である。 次に、本年度は山形県の教育者・児童文学者である須藤克三の教育思想とその実践に着目した。彼は戦前、口演童話を含む児童文化運動の実践にたずさった実績から、戦後には地域の教育・文化運動の中心的な担い手となって活動を展開した人物である。調査では、戦前から戦後にかけて多数出版された彼の著書、および彼の思想的な影響を多分に受けて組織された、戦後の「児童文化研究会」の活動に関する資料の収集をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、第一年度に得られた研究成果を、論文としてまとめた(現在審査中)。また、次年度にあつかう研究課題のための資料収集をおこなうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度中に資料の収集をおこなった、山形県の教育者・児童文学者である須藤克三の教育思想とその実践について、現地においてさらなる資料収集・調査を実施する。また、得られた資料を基にその考察をおこなうことを研究の課題とする。本研究によって、彼の口演童話をふくむ児童文化運動の取り組みが、戦前、どのように展開されていたのか明らかにすることとする。その上で、それが戦後の山形県における地域の教育・文化運動とどのような関わりをもつのか、今後さらなる研究を進めていくために、課題の方向性を検討したい。
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Causes of Carryover |
本年度は、昨年度の調査内容を論文化することが第一の課題であったこと、また、次年度の研究課題の達成に向けた資料の収集作業が東京を中心としており、交通費および出張費用がかからなかったことから、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、これまで都内で収集した資料に加え、本研究の課題分析に必要な資料が豊富に保存されていることが分かっている、山形県内での資料収集および調査を実施する。次年度使用額はそのための出張費、施設利用費、資料のコピー代等に使用する。
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Research Products
(1 results)