2015 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期の「口演童話」活動にみる地域児童文化運動の社会教育的意義について
Project/Area Number |
25780491
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松山 鮎子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (70608835)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 児童文化 / 近代 / 学校外教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究の最終年度であり、これまでの成果を論文として執筆し発表することを第一の目標としてきた。下記の二つの論文が、その具体的な成果物である。 1)「戦前期における教師の子どもへの「まなざし」の変化について:須藤克三の「語ること」の教育実践を事例として」(単著・『早稲田大学教育評論』第30巻第1号・2016.3掲載) 2)「昭和初期の口演童話活動における教育者と子どもの関係について:松美佐雄の「動的」概念を手がかりに」(単著・『日本学習社会学会 創立10週年記念出版』2016.9掲載予定) 具体的に、これまでの調査研究により明らかとなったのは、戦前の都市や地方においておこなわれていた口演童話のの性格が、社会教育的な文化活動から、小学校教師らの学校内外の教育実践へと移り変わる中で、当初の娯楽の要素に加えて、教育的な要素が付加されていったことである。また、教室でのお話という知識の伝達のかたちにおいては、教師と子どもとの目の交流が重視されており、そこに知識を伝えるものと伝えられるものという一方向だけではない双方向の関係性が生じていた点を示すことができた。 ここから述べられる本研究の実績は、これまで二項対立的、直線的な発展の方向性でとらえられていた近代の教育のありかたに対して、口演童話においては教師と子どもの直接的なことばのやりとりの中で、ある種の「知識」の組み換えがおこなわれており、そのようなズレをも含みこみながら、全体として教育が国家社会の発展に寄与していった、その様相の一端を描き出したことである。
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Research Products
(2 results)