2015 Fiscal Year Research-status Report
道徳教育における自然概念と崇高概念――ドイツ教育哲学とフランクフルト学派の視点
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25780497
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
白銀 夏樹 関西学院大学, 教職教育研究センター, 准教授 (00335712)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 道徳教育 / フランクフルト学派 / アドルノ / 自然 / 崇高 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず日本の道徳教育における「自然」「崇高」の概念の関係でについて研究を進めた。戦後の道徳教育における「自然」「崇高」概念は、宗教教育をめぐる議論が背景の一つにあることを確認した。そしてカント的な解釈や自然宗教的解釈が併存していたことについても確認できた。またフランクフルト学派における「自然」「崇高」概念の研究としては、ホルクハイマーと共同研究者であるアドルノとの相違が明らかとなった。晩年のホルクハイマーにおける神学への傾倒は、端的に言えば批判理論を基礎づけるための「絶対的他者への」ものであったのに対して、アドルノは神学的基礎づけを回避し、「自然」「崇高」概念についてもカント哲学などの批判から議論を展開していた。そしてドイツ教育哲学の研究としては、ホルクハイマーやアドルノに関する道徳教育論はほとんど見当たらなかったため、おもにアドルノに焦点を当てて道徳教育論の解明を行った。具体的には人間の内的外的自然支配の帰結とされる「アウシュヴィッツ」を繰り返さないための道徳教育として、暴力性や偏見の排除、自己正当化の回避、経験能力の強化、社会的啓蒙などが挙げられる。こうした教育には理想的人間像を掲げそれを達成する手段として教育を位置づける論法や、その人間像を複数の能力に分解しその増強(エンハンスメント)を教育の課題とする論法とは一線を画している。実はこの論法は「自然」「崇高」をめぐる教育との親和性が低いため、今後本研究が進める道徳教育論の構築に資するところがあると予測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度内に論文を予定通り2本執筆することができた。ただし校務の関係で海外(ドイツ)での調査を見送ったため、次年度に調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度内に学会発表2回、論文執筆を3本予定している。またそのための調査をドイツで行う予定としている。ドイツでの調査は本研究において二度目となるため、調査対象となる資料の所蔵場所等はすでに確認しているが、複写禁止資料も多数あるため、資料の解読を中心に調査を行う。
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Causes of Carryover |
ドイツでの調査研究の予定であったが、校務スケジュールとの調整がつかず、次年度に改めて調査を行うことにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大学の夏季休業に合わせてドイツでの調査研究を行ための旅費に充てることとする。
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Research Products
(2 results)