2016 Fiscal Year Annual Research Report
a study on the significance of concept of nature and sublime for moral education
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25780497
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
白銀 夏樹 関西学院大学, 教職教育研究センター, 准教授 (00335712)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 道徳教育 / 自然概念 / 崇高概念 / ドイツ教育哲学 / フランクフルト学派 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である本年度は、自然概念と崇高概念の道徳教育的な意義と課題を展望した。まずフランクフルト学派の思想の帰結として、自然概念の自明視が困難である一方、遺伝子操作などの生命科学の「侵犯」に対抗しつつもその神聖視も批判したハーバーマスの自然概念の重要性が明らかとなった。またドイツ教育学の動向からは、「自然―人間」関係そのものの批判からの文化的洞察と社会参加意識を伴うデ・ハーンらの環境教育学の構想の意義を確認することができた。環境倫理学の動向からは、自然概念の多義化・洗練化による環境問題の視点の多様化が確認された。以上の分析から、「自然-崇高」という近代の美的・倫理的・宗教的な問題構成が、「持続可能な社会」という議論の背後で文化観・科学観・社会観の抗争にある現状が浮き彫りとなった。他方で日本の道徳教育史において「自然への崇高の念」という問題構成は、平成元年学習指導要領改訂において本格的に主題化したが、生命尊重・自然美・人間の尊厳という三つの内容項目が個別化され硬直化している現状にある。むしろ「自然―崇高」の問題構成をめぐる思想的な歴史と現状をふまえるならば、現在の硬直した内容項目の扱いにとどまらず、項目を超えた連携がまずは必要となり、さらには多様な自然概念の現状をふまえながら他教科・多領域との連携と分担も課題となる。以上の研究をふまえ本研究の結論としては、道徳教育としての自然概念と崇高の位置づけを再定位し、自然と人間との多様な関係に開かれる鍵となる道徳教育の位置づけを明確にするに至った。
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Research Products
(2 results)