2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の「人事アセスメント」の開発・利用に関する知識社会学的研究
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25780508
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
二宮 祐 岡山大学, 若手研究者キャリア支援センター, 講師 (20511968)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高等教育 / 質保証 / アセスメント / 就職 |
Research Abstract |
1960年代後半以降の「人事アセスメント」の開発の歴史的展開に関して、第一に、先行研究レヴュー、資料収集・解読を実施した。とりわけ、1960年代後半から1980年代における教育心理学、産業・組織心理学、心理統計学、新規学卒者の採用に関する人事労務論、行動科学の発展に寄与する電子計算機論に着目することによって、「人事アセスメント」がそれら諸科学の相互作用のなかで開発されたことを明らかにした。第二に、聞き取り調査を実施した。「人事アセスメント」の開発に携わった研究者、「人事アセスメント」を長年にわたって利用してきて企業関係者、合計約10名を対象としてそれぞれ1~3回程度当時の事情について話を伺った。この聞き取り調査を通じて、非公開文献の一部を入手するとともに、平成26年度から新たに開始する企業を対象とした調査のためのラポール形成を行った。以上を通じて、経営の実践領域において心理学の知識が積極的に利用されてきた歴史をあらためて確認した。また、高等教育のエリート段階からマス段階への以降/マス段階からユニバーサル段階への移行、企業の人的資源管理の目的・手段の変容のなかで、企業における年長者の経験(カン、コツと表現された技術)に基づく測定が疑問視され、心理学の知識が科学の名の下に応用に値するものとして人びとに受容されるようになる経緯を明らかにした。 ところで、高等教育の「入口」については一定の研究の積み重ねがある。しかし、「出口」に関する研究は必ずしも十分ではない。また、学習成果の測定がどの程度まで可能であるのか、測定が可能であると信じられる社会・経済的文脈が整理されないまま、喫緊の政策課題としてカレッジ・インパクト研究が進められている。本研究は戦後日本の高等教育の「出口」に関する「試験の社会史」を描き直すことを通じて、そうした現状を整理することに資するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究レヴュー、資料収集・解読については当初の計画以上に進展している。特に「人事アセスメント」の開発に関して公開されている文献はほぼ収集・解読が済んでいる。一方、聞き取り調査については当初の予定よりやや回数が少ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に実施した基礎的な研究をふまえて、1990年代後半以降に「人事アセスメント」、とりわけ新規学卒者を対象とする能力検査や性格検査が普及する経緯について、企業を対象とした聞き取りを行う。企業規模(単体従業員数10,000人以上、1,000人以上、1,000人未満)毎、「人事アセスメント」の利用期間(30年以上、10年以上、10年未満)毎に分けて、合計で15社程度を対象とすることを目標とする。1社につき、2、3回の聞き取りを実施する。また、1990年代後半以降の大学生による能力検査や適性検査の受検に関する資料を収集・解読する。特に「SPI対策」と呼ばれる言説の生成、変遷に着目して、五大紙、大学生向けの雑誌、聞き取り調査の対象者が所属している大学を中心とした大学就職部(現代ではキャリアセンターなどと改称されている)発行物を収集・解読する。そのうえで、現代の大学生がその受検をどのような経験として捉えているか聞き取り調査を行う。対象は、大学の入試難易度、学部、所在地毎に分けて、合計20人程度とする。1人につき1回実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
聞き取り調査について、対象者の都合により回数が少なくなったため旅費に未使用額が生じた。 聞き取り調査の旅費として使用する予定である。
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