2013 Fiscal Year Research-status Report
生徒減少期の高校教育機会の提供構造―政策動向と需要側の意識・行動の総合的解明
Project/Area Number |
25780516
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
香川 めい 成蹊大学, その他部局等, その他 (00514176)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教育機会 / 高等学校 / 生徒減少期 / 教育政策 / 公立高校/私立高校 |
Research Abstract |
本研究は、高校教育の機会に注目し、各地域において教育機会の提供構造がいかに変化し、どのような帰結を生んでいるのかを明らかにすることを目的としている。社会的不平等の所在やその是正のための方策を考える上で、教育機会がどのように提供されているかを把握することは、重要な問題である。少子化が進行している現在、この問題は、これまでの教育拡大期の増え続ける教育需要にいかに応えていくかという問題とは異なる次元の問題として立ち現われつつある。義務教育である小中学校段階については、すでに研究の蓄積がなされつつあるものの、高校教育段階については、ジャーナリスティックな視点からの報告を除いてほとんど手がつけられていない。高校進学率が97%を超えている日本において、高校教育は実質的な「ナショナル・ミニマム」としての性格を持っている。しかし、生徒数が減少している中で、地域の教育機会の提供構造がどのように変化しているかは明らかにされているとはいえない。本研究では、教育機会の提供側と需要側に双方に注目し、以下の2つの方向からアプローチする。(1)1990年代半ば以降現在までを対象とし、官庁統計データと政策資料を収集して、各都道府県の動向を把握する。(2)(1)の検討結果を踏まえ、教育の需要側である保護者と高校生に対し、高校選択時の行動や教育費に関する質問紙調査を行う。 初年度にあたる本年度は、(1)のアプローチから研究を行った。具体的には、1990年代半ば以降の文部科学省「学校基本調査」の各都道府県別高校数や高校生数のデータを入手入力し、分析を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度である平成25年度は、①生徒減少期の高校教育政策の全国的な動向をレビューして都道府県レベルの量的なデータの収集および分析を行い、①の結果をふまえて②特徴的な都道府県を1~2つピックアップし、その都道府県におけるより詳細な高校教育政策に関わる資料を収集し、翌年度の質問紙調査に資する基礎データを作成することを予定していた。①生徒減少期の高校教育について「学校基本調査」等の官庁統計のデータを入力したデータベースを作成に着手した。比較的入手の容易な文部科学省「学校基本調査」と「地方教育費調査」のデータの入力は終えたが、「今日の私学財政」については、まだ終えられていない。 入力したデータについて、設置主体別、都道府県別の推移について検討を行った。設置主体別の全国的な動向からは、2002年以降全国的に高校数は減少しているが、その傾向は公立高校にのみ見られるもので、2000年以降400校以上減少していること、一方の私立高校数には変化がないことが分かった。1校あたりの生徒数から見ると、私立高校の規模が公立高校を常に上回っているものの、いずれの規模も縮小傾向にあること、加えて公立高校と私立高校の規模の差は小さくなっていた。②についてはまだ着手できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
生徒減少期の高校教育機会の提供構造を見ていく上で、地域により特化して研究を進めていく。学校数で見た場合、公立高校においては数の減少が見られるが、私立高校では見られないということは、生徒減少期の量的対応への感応性は公立セクターで高く、私立セクターでは低いということである。高校生の教育機会という観点からこの問題を考える場合、どこで高校が減っているのかを見ることが必要になる。なぜならば、居住地域の移動を伴う進学行動が広く見られる大学と異なり、高校生の多くは親元から通える範囲の学校に進学することが大半だからである。教育機会を把握するうえで「通学圏」という地理的要素の検討は欠かせないものとなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データベースの作成のために労務者を雇用する予定であったが、それがかなわずデータベースの作成と分析に遅れが出た。このため人件費・謝金として計上していた経費は使われず次年度使用額が生じた。 前年度に使用するはずだった人件費・謝金相当額を用いて、「通学圏」を把握するためのデータベースを作成する。具体的には『全国学校総覧』記載のデータを用いて各高校の住所を入力した上で、都道府県や市区町村の教育や社会、経済に関するデータと接合する。加えて、特徴的な自治体での資料収集にかかる経費にも充当する。
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