2014 Fiscal Year Research-status Report
生徒減少期の高校教育機会の提供構造―政策動向と需要側の意識・行動の総合的解明
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25780516
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
香川 めい 東京大学, 社会科学研究所, 特任助教 (00514176)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教育機会 / 高校教育政策 / 生徒減少期 / 公立高校/私立高校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高校教育の機会に注目し、生徒数が減少していく中、それぞれの地域において教育機会の提供構造がいかに変化し、どのような帰結を生んでいるのかを明らかにすることを目的としている。義務教育段階と異なる高校教育機会の特徴の一つは、その少なからぬ部分が私立高校によって担われていることである。もちろんここには大きな地域差があるものの、量的拡大が生じた1960から70年代に各都道府県の公私分担のあり方の原型が形成された。少子化が進行している現在、高等学校の生徒数は全国的に見ればピーク時の6割にまで減少している。したがって、教育拡大期の増え続ける教育需要にいかに応えていくかとは異なる次元の問題として高校教育機会の問題が立ち現われていると考えられる。 生徒減少期の高校教育機会にどのような変化が生じているのか。本年度は昨年度に引き続き(1)「学校基本調査」から得られるデータの分析を行い、加えて政策を把握するため(2)各都道府県の高校教育政策資料の収集と教育委員会に対するアンケート調査を実施した。 (1)では1988年と2013年のデータを比較して検討を行った。その結果、概して生徒数の減少に伴い公立高校数は減少する傾向にあるが、私立高校数には変化がないかむしろ微増している都道府県が多いこと。公立高校数の減少は生徒数の減少との相関はあるが、すべての都道府県で同じように減っているわけではなく、生徒数減に比して大きく学校数を減少させるところもあれば、ほぼ変化がないところもあること。公立高校数と私立高校数の変化はトレードオフの関係にはないことが判明した。(2)について、教育委員会に公私立高等学校協議会とコース制について尋ね、ほとんどの都道府県に公私協議会が存在していること、定員調整方法は比率基準が多いものの、半数では比率基準でも人数基準でもない方法を取っていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、平成26年度は教育の需要側に焦点をあて、質問紙調査を実施することを予定していた。しかし、各都道府県の量的側面からみた高校教育機会の公私分担の変容とその規定要因を検討し、高校教育政策面(再編計画)資料を収集する中で、公私分担に大きく影響している公私立高等学校協議会の存在が浮上してきた。この協議会がどの程度広範に見られるものなのか、現在でも存在しているのかといった情報から欠落していたため供給側に軸足を置き、公私立高等学校協議会について基礎的な情報を収集することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
生徒減少の中、程度の差はあれ公立高校の方は各都道府県の策定した再編・統合計画に則って学校数が縮小していくのに対し、私立高校数には変化がないかむしろ微増する傾向が見られることが明らかになった。私学率は全国的に微増する傾向にあるが、これが何らかの一時的なショックを反映したものなのか、それとも趨勢的なものなのかは現段階では判断できない。いずれにせよ、計画的に縮小していく公立高校セクターとそうではない私立高校セクターの対比が明確にあらわれるようになってきた。 日本の高校教育機会の公私分担比率が長年安定したものであった背景には、公私立高等学校協議会の存在があったと考えられる。しかし、公私立高等学校協議会について言及した先行研究は多くはない上、各地の高校教育機会の安定化にどのように寄与していたのかについては全く検討されていない。そこで、今年度は供給側の政策面に焦点を絞り、インタビュー調査を行うなど質的情報を補完していくことで、より詳しい公私分担のあり方と今後について検討していく。
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Causes of Carryover |
高校を対象に教育機会の需要側に対する質問紙調査を行う予定であったが、供給側の変容を追う中で出てきた新しい課題である「公私立高等学校協議会」について把握する必要が生じたため、研究計画を変更し、供給側に特化することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
公私立高等学校協議会について論じた先行研究は多くはなく、その実態は未解明なままである。平成26年度に行った教育委員会を対象としたアンケート調査の結果をふまえて、今年度は、実際に各地に赴き、資料収集やインタビュー調査を実施することとし、一部は旅費として用いる。並行して「どこで高校が減っているのか」を把握するため、昨年度着手できなかった高校の所在地に関するデータベースの作成も行う。そのための労務作業者を雇用するためにも充当する。
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Remarks |
該当なし
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Research Products
(2 results)