2013 Fiscal Year Research-status Report
越境する日本人家族の教育戦略と「グローバル型能力」形成に関する比較考察
Project/Area Number |
25780517
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Wako University |
Principal Investigator |
額賀 美紗子 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (60586361)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | トランスナショナリズム / 日本人 / 若者 / 子ども / 教育戦略 / グローバル型能力 / アイデンティティ |
Research Abstract |
本研究は国際移動する日本人家族を対象として、トランスナショナルな社会空間における子どものアイデンティティや能力形成およびその過程に影響を与える親の教育戦略と学校の制度・文化を明らかにすることを目的とする。本年度の研究成果は以下に集約される。 第一に、ホノルル在住の日本人母に対して行ったインタビューをもとに、トランスナショナルな教育戦略という視点から親子が現地の日本人補習授業校をどのように意味づけているのかをロサンゼルスの事例と比較考察し、論文としてまとめた。その結果、ホノルルの母親たちはコスモポリタン志向が強く、日本の学校文化を再現する補習校の学習に対して葛藤を抱いていることが明らかになった。また、補習校で日本語学習を継続するためには、家族の経済的安定および親子の情緒的絆が重要であることも示唆された。この分析をもとに、グローバル型能力育成という見地から従来の補習校のあり方を見直す必要性を提起した。 第二に、越境する若者・子どもたちの「居場所」について国内外の研究をレビューし、異文化間教育学と居場所研究の交錯について論文にまとめた。国境を物理的・認知的・情緒的に超えて生活する子どもたちの増大は、居場所が複数の国にまたがって存在したり、バーチャルな空間に拡大していることを意味する。論文では、トランスナショナリズムやディアスポラといった理論的視点を居場所研究に採用し、越境する子どもたちの生活世界を実証的に検討ことの重要性を示した。 第三に、幼少期から海外に住み、大学もしくは就職段階で日本に「帰国」した日本人の若者をスノーボールサンプリングによって募り、8名にたいして反構造的インタビューを行った。日本移住の動機や、日米社会を跨ぐトランスナショナルな生活について聞き出した。来年度はインタビューデータのテープ起こしを行い、グローバル型能力の育成といった視点から分析を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は越境する若者に関するレビュー論文と、過去にハワイで収集したインタビューデータの整理と分析を行い、論文として発表できたという点で当初の計画を達成したといえる。一方、体調など諸事情により予定していた海外調査を行うことができなかった。このため、越境経験のある若者たちのインタビュー調査を国内で行い、データを収集した。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は海外調査の時間を確保することが課題である。当初予定していたロサンゼルスとホノルルだけではなく、イギリス、オーストラリア、シンガポールにおける現地調査の可能性を模索中である。また、長い海外生活を経て日本に戻った日本人の若者へのライフストーリーインタビューや、政策文書の国際比較から、日本の学校や職場における「グローバル型能力」の育成の動向や課題についても検討する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
産前休暇取得のため年度半ばで研究を中断したため当初の計画よりも支出が減り、次年度使用額が生じた。 差額については、翌年度に旅費として使用する予定である。
|