2013 Fiscal Year Research-status Report
数学教育における類推を能率的に活用する授業構成と教材開発に関する実証的研究
Project/Area Number |
25780531
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
中川 裕之 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (00450156)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 類推 / 類比 / 数学教育 / 数学 |
Research Abstract |
本年度は,研究の目標1である「類推においてどのような類似性に着目すべきかを明らかにすること」を達成するために,類推に関する先行研究,特に,数学教育学と認知科学における先行研究を分析し,類推のとらえ方として「観点を設定すること」,「基本的な性質を想定すること」を導出した。 そのうえで,それを中学校の図形領域の内容で具体化し,教材研究レベルで有効性を検証した。その結果,類推のとらえ方が有効であることが示唆されたため,日本数学教育学会第46回秋期研究大会において,その成果を発表した。 次に,類比のとらえ方の有効性を実践レベルで検証するために,中学生を対象とした検証授業を行った。学習指導案を作成し,大分大学の附属中学校の先生を中心として指導案の検討会を開いて改善を繰り返し行った。授業については3つの授業を計画し,指導案を作成したけれども,本年度中に行えたのは2つであり,残り1つの授業は内容を学習する時期の問題もあり,翌年度に持ち越している。 現在行っている検証授業の結果からは,類比のとらえ方が有効であることが示唆されている。そのため,翌年度以降で,詳細な分析を行っていくと同時に,より多くの内容や学校で授業を行うことで,その一般性を検証したい。 類比のとらえ方の実践レベルでの検証としては、授業を計画すると同時に,中学校の数学科教員へのアンケート調査も実施した。調査研究に関する先行研究を分析し,質問項目や分析方法を検討した後,附属中学校の教員や学生を対象としたプレ調査を行って,アンケートの有効性を調べ,その結果にもとづいて一部の調査項目,質問の仕方を改善した。そして,大分県内の60人の先生に依頼し,現在はその返却を待っている所である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究の目標は,「類推においてどのような類似性に着目すべきかを明らかにする」であり,そのための方法として,数学教育学の先行研究のレビュー,認知科学の先行研究のレビュー,検証授業,数学科教員へのアンケート,数学者へのアンケートを計画していた。 そのうち,行わなかったものは,数学者へのアンケートであり,これは先行研究のレビュー,また数名を対象としたプレアンケート調査の結果,不要と判断したためである。 実施したけれども,完全には終わらなかったものは,検証授業と数学が教員へのアンケート調査である。検証授業については,当初は1つの授業しか行わない予定であったけれども,研究を余裕をもって進めるために3つの検証授業を行うことに変更した。そのうち,2つの検証授業を行い,学習する内容の時期の関係で1つの授業を翌年度の5月に持ち越している。また,数学科教員へのアンケート調査は,アンケートの集まりがあまりよくなく,締め切りを延ばしたため,その回収と集計が翌年に持ち越されている。 それら以外の項目については,当初の計画通り進み,終えている。そのため,研究の達成度に関しては,おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは類比のとらえ方について理論的に考察してきたため,今後は子どもの側からアプローチしてみたい。具体的には,子どもの類比のとらえ方を明らかにし,類比を活用する授業を行う際の課題を明らかにしていきたい。 そのために,翌年度以降で,まずは,次のことを行う。類推を行う授業案や授業映像,数学教育の先行研究を分析すると同時に,生徒の実態を調査する研究授業(学力調査問題を用いる)を行う。その結果を分析し,前年度の研究成果を比較することを通して,類推がうまく活用できない課題を特定する。そして,課題を改善するための教材と授業を開発し,生徒が類推を能率的に活用する授業の在り方を探る調査計画を立案する。そして,その計画にもとづいて授業実践を行う。と同時に,全国学力・学習状況調査を参考にした評価問題と解答類型を作成し,授業を評価し,改善していく。また,それらの結果を基に,類似性のとらえ方を再構築する。 また,これまで研究成果を学会誌や学会において発表することが思ったほどできなかったため,今後は研究成果の発表にも力を入れていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理論の実践レベルでの有効性の検証作業である授業実践のうち1つが未実施であること,また,中学校の教員を対象としたアンケート調査の集計が終わっていないことが原因となり,物品費において,それらの経費を翌年度に持ち越すことになりました。また,それらの調査結果についての発表を行う学会への参加も延期したため,旅費も翌年度に持ち越すことになりました。 検証授業については,学習指導案は完成しているため,それに基づいて教具を作成する際に,また,アンケート調査については,結果の集計を行う際に繰り越した物品費を使用する計画です。そして,それらの調査結果をまとめた研究発表を行うために学会へ出張する際に繰り越した交通費を使用する計画です。
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Research Products
(4 results)