2019 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害者の自己に関する研究―幼児期からの発達と青年期以降の支援
Project/Area Number |
25780538
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
滝吉 美知香 岩手大学, 教育学部, 准教授 (00581357)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 自己理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,平成25年度より開始,平成27年度から30年度の産休育休による延長を経て,平成31年度(令和元年度)に再開したものである。本研究の主たる目的は,自閉スペクトラム症者が他者との関係性の中でどのように自分自身に対する理解を形成していくのかについて,発達的視点からとらえることである。 平成25年度・26年度は,主に青年期・成人期のASD者の自己理解を軸とした研究活動を展開してきた。代表的なのが高等教育機関におけるASD学生支援に関する一連の研究であり,すでに学会大会や論文等でその成果を発信している(当該年度研究実施状況報告書で報告済)。 令和元年度は,幼児期・児童期の対象者を中心とした研究活動を展開した。ASD者が自己を形成する際に必要不可欠となる周囲の仲間関係の形成支援につなげるため,ASD児が在籍するクラスを対象に,数か月間にわたる調査を実施し,仲間関係をとらえるための行動観察やインタビューを実施した。収集したデータは分析し,結果の考察を経て,令和2年度に開催予定の学会でポスターまたは口頭発表を行う予定である。 平成25年度から継続して,児童期から成人期にわたる幅広い年齢層のASD者を対象とした個別インタビューによる自己理解データ収集を実施している。本年度も複数名に研究協力をいただき,収集したデータは現時点で計52名となっている。現在分析中であり,令和2年度の学会発表を目標としている。また,その一部のデータについては,すでに報告したASD学生支援に関する研究とあわせた検討を行ったうえで,査読付き学会誌へ投稿し,修正採択の通知を受けている。修正した論文は令和2年度に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記【研究実績の概要】に示したとおり,4年間計画の前半2年では,主に青年期以降のASD者にかかわる研究内容を実施しており,育休・産休4年を経て,後半2年では,主に幼児・児童期のASD者にかかわる研究内容を実施している。また,初年度から一貫して思春期から成人期にわたる幅広い年齢層のASD者を対象としたデータの収集も継続している。 復帰直後であった令和2年度は,学内外への成果発信が思うようにできない部分があったものの,研究データの収集や蓄積,また,結果分析や考察等は,着実に進めることができた。そのため,最終年度となる次年度には,学会発表や論文執筆を行うことができると判断し,進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度は,これまで蓄積してきた研究成果をまとめ,学会発表を経て,論文執筆を行う予定である。大きくふたつのテーマを予定しており,ひとつは,幼年期ASD者の支援にかかわる内容であり,もうひとつは,思春期以降のASD者における自己についての語りを分析した内容となっている。前者は日本特殊教育学会でのポスター発表および論文投稿,後者は日本発達心理学会でのポスターまたは口頭発表および論文投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
年度末の新型コロナウィルス感染症拡大に伴う緊急事態につき,予定していたデータ収集や学会参加のための出張の中止・延期を行ったことによる。事態が落ち着き次第,改めて日程を調整し必要な研究活動を行う予定である。
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