2015 Fiscal Year Annual Research Report
養護学校義務制実施期における重症心身障害児教育実践の成立と構造に関する歴史研究
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25780542
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
河合 隆平 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (40422654)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 重症心身障害児 / 教育実践 / 亀岡小・中学校みのり学級 / 丹波養護学校亀岡分校 / 花明・花の木学園 / 養護学校義務制 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる本年は、これまで研究成果を論文化する作業を集中して行った。まず、これまでの文書史料による検討に加えて、本年度は関係者(みのり学級元担任、花の木学園元指導部長、花の木学園・みのり学級保護者)への聞き書きを行った。聞き書きによって得られた口述史料については、文書史料による裏づけを行い、1970年代の重症児教育実践の成立に関する歴史叙述にあたり、以下のような事実を得ることができた。 重症児施設は、医療や福祉から排除され「生きられない」状態に追いやられた重症児のいのちを救済したが、生活の質の向上をはかる十分な条件を備えていなかった。そうしたなか、みのり学級の教育は、重症児の心身機能や能力を高めて支援と依存を極小化させていく主体ではなく、他者と関係を取り結びながら要求を表出する主体として発達させることが、かれらの心身の生理的基盤の成熟にまでさかのぼって求められた。みのり学級と花明・花の木学園の実践は、医療や福祉が、教育との接点をもち、教育の論理をくぐることで、重症児のいのちと生活の保障を亢進させる可能性を示した。 なお、上記の研究作業のまとめとして、日本教育学会第74回大会(2015年8月29日、お茶の水女子大学)において「重症心身障害児の生存保障と学校教育の成立―1970年代重症心身障害児施設における生存・発達・教育―」と題する口頭発表を行った。最終的には、「1970年代の重症心身障害児施設における教育の希求と生存保障―亀岡小・中学校「みのり学級」(丹波養護学校亀岡分校)を事例として―」(岩下誠・三時眞貴子・江口布由子・河合隆平編『「生存」への支援と排除の比較社会史―せめぎあう教育・労働・福祉―(仮)』昭和堂、2016、印刷中)として論文化した。
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